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継母礼賛 

マリオ・バルガス・リョサ/著 西村英一郎/訳 福武書店

冒頭は、40の誕生日を迎えた継母に心憎いプレゼントを贈る少年という、ほのぼのとした雰囲気である。再婚するにあたってルクレシアは、なさぬ仲の息子の存在を一番心配していたのだが、少年はこの美しい継母を心底崇拝しているようだ。でも、母に甘える息子の“おやすみなさいの接吻”がちょっとヘン…?

麗しの継母ルクレシアと天使のような少年アルフォンソ、そして自らの身体を変質的な喜びを持って磨き上げる夫リゴベルト。この3人の姿を、「リディア王カンダウレス」「水浴の後のディアナ」等の絵画と寓話にて描き出していくリョサの筆致は、官能に溢れながらも冷徹であり、ラストではそれまで浮かべていた笑みが一瞬にして凍りついてしまう。そして、女神を賛美する文章でも、他言を憚るほどに詳細を極めた肉体の描写でも、遥かな異世界に引き込まれたかのような言葉の巧さが本書でも光ります。
帯を見ると結構キツそう、中身を見るともっとショッキングという買うには躊躇してしまう本ですが、見つけて良かった買って良かった。一年の締めくくりの1冊としては大満足、強烈に心に焼きつく本でありました。
そうそう、この本には続編があるのですよね。「継母」は絶版だけれど、こちらは入手可能。実は既にネット書店のカートに鎮座しております♪

追記

続編「官能の夢」は中年男性の白昼夢でありました…

無理して読まなくても、といった内容。


古書修復の愉しみ 

アニー・トレメル・ウィルコックス/著 市川恵里/訳 白水社

大学院に在籍しながら印刷業に携わっていた著者は、大学の製本講座で修復家のアンソニー氏と出会い、彼に弟子入りすることになる。
この修復作業が実に細かい。数百年前のばらばらになりかけた本を一旦ばらし、ページに洗いをかけ、破れをつくろって、外見を元のように美しく再現するだけではなく、また読むことができるように作り直すのだ。正に気の遠くなるような作業の連続。そして一流の技術者達の、自分の得た技術を後世に残す為の努力にも感服である。

「弟子入り」ってなんか懐かしい日本語だが、著者は日本の職人に造詣が深く、師弟制度についても詳しい。英語の「クラフツマン」「アルティザン」では伝えきれない“職人気質”を理解し共感してくれているのは嬉しい限りである。仕事に使う道具も日本のものが頻繁に出てきて、やはり昔からこの国は技術立国だったんだ…としみじみ思った。今でも日本の技術を支えているのは、町工場の職人さんの、経験に裏打ちされた高度で精密な技術だものなあ。

この本には派手な面白さはないが、修復技術やその歴史、図書館の奇観本保存の現状など、本好きの一人として非常に読み応えを感じた。仕事としても、やりがいのある面白い職業だろう。自分の不器用さと飽きっぽさを自覚している身としては見果てぬ夢でしかないけれど。

本書を読了してすぐに、書棚の蔵書をチェックした。大部分が花ぎれ(背の中に貼り付ける、芯の入った布)がなかったり、あっても紙製だったりと、やはりいまどきの大量生産品だったが、一冊だけ飛びぬけてしっかりした作りの本があった。山尾悠子著「ラピスラズリ」である。この本は値段が高かったので一度図書館で借りたのだが、後に内容と装丁の美しさに所有欲が抑えられず購入したもの。値段に負けずに買って良かった~。

古書修復の愉しみ 古書修復の愉しみ
アニー・トレメル ウィルコックス (2004/09)
白水社
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シャドウ・パペッツ 

オースン・スコット・カード/著 田中一江/訳 ハヤカワSF文庫

「エンダーズ・シャドウ」「シャドウ・オブ・ヘゲモン」に続く、ビーンシリーズ第三弾。今回はヘゲモン・ピーターがアシルを利用しようと画策する場面から始まります。おうおう、いくらピーターと言えどもアシルの敵ではないような…。
この巻では、ピーター、ヴァレンタイン、エンダーの3人の子の両親であるジョン・ポールとテレサ夫妻の才能が遺憾なく発揮されています。お陰でピーターの可愛らしさが目立つこと(笑)。あらすじを紹介すると、今回の戦争がどういう経緯を辿ったかまでばれてしまうので控えますが、近未来の世界情勢は複雑だけれど頷けるかも(の、ような気がするだけですが…現在の状態にも詳しいとは言えないので)。
目先の問題には一応の決着を見る本書ですが、それでもビーンの根本的問題は解決せず。本国で来年刊行予定のShadow of the Giantの邦訳を待つしかないですね。しかしこの「パペッツ」も、刊行から邦訳が出るまで2年かかっているのですよ。とすると、続きが読めるのは2007年。うわ~遠すぎる。今回もこの本を読んだ後に「パペッツ」を読み返す必要があったし、それでも足りないので今から「エンダーズ・シャドウ」に入る予定。次回は全部終わるのに一週間かかるだろうな。そっか、予定が近づいたら先に復習しておけばいいかも。一巻ごとに複雑な筋立てなので何年も頭に留めて置けないのです…わはは(汗)。

シャドウ・パペッツ シャドウ・パペッツ
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剣客商売 

剣客商売
池波正太郎/著 新潮文庫
数年前から読書仲間に進められていた「剣客商売」。時代物は好きなのだが、全16巻に恐れをなしてしまい、読もう読もうと思いつつも手を出しかねていたのだ。しかしここのところ、出先での待ち時間が多いので、そこで読むのに丁度いいかも?と思い、第一巻を借りてきた。
…いや~、参りました!途中で用事が出来ても読み止められない。他の時代物ではこんなことはなかったのに。兎に角面白いのである。小兵衛の人物設定なんて脱帽するしかない。60の小柄な好々爺で、40も歳の違う愛人(後に女房)おはるとじゃれあい、剣客としては一級品。ああ、なんと捉えどころのない、魅力的なお方なのでしょう(既に惚れてる)。第一巻の中では「まゆ墨の金ちゃん」での小兵衛が良かったですねえ。剣客と親心の板ばさみ、この描写の細やかなことよ。あー、続きが読みたいっ!
 
剣客商売その2
2004・10・18
昨日今日で4冊読了。中毒症状最高潮です♪
『天魔』
これは何といっても「約束金二十両」が面白かった!平内太兵衛さん、この後も出てくるように書いてありましたが何巻なのかな?益々シリーズ制覇に熱が入りますわい(笑)。
『白い鬼』
これは暗い話が多い…でも嫌いじゃないんですよね、同情の余地の無い悪人はしっかりやっつけてくれるし(笑)。
しかし、腕を切り飛ばされてしまう悪人さんの多いこと。この世界にリチャード・キンブルが迷い込んだら、“片腕の男”がいすぎて頭抱えるでしょうねえ。
『新妻』
「鷲鼻の武士」にまず大笑いしちゃいました。どっか抜けてる人って大好きなのです。今後も出てきそうだし、楽しみ。他は重い話が多いけれど、しみじみと読めました。
『隠れ蓑』
やはりお気に入りは「徳どん、逃げろ」。辛酸を舐めてきたらしい、その上強盗を生業とするのに憎めないですね、八郎吾どん。実は密かに小兵衛さんちに押し入る場面を期待してたのですが、残念(笑)。そして「隠れ蓑」に涙…。こういうのって弱いワタシ。

眠い… 剣客商売その3
2004・10・21
何故眠いかって?聞かないで下さいよお今更(笑)。
『狂乱』
いや~、何とも虚しいけど、でも読後感が悪くならないところが良いですねえ。「狂乱」は特に。
『待ち伏せ』
若き日の小兵衛が垣間見られる1冊です。大治郎も父親に似てきたような…。彼も30年後には好々爺になるのだろうか(笑)。
『勝負』
小兵衛も遂におじいちゃま。だからか、ほのぼのする話が目立ちます。「その日の三冬」は寂しかったけれど…三冬さん、以前はあまり好みではなかったけど、最近好感度アップです~。
『春の嵐』
わぉ・長編ですか。流石に長編も面白いっ。でも、短編のリズムに慣れてしまったし…やっぱり短編でしみじみが好みですなあ。これは他のと離してじっくり読んだほうがいいのかも。

剣客商売その4
2004・10・22
昨日今日でさらに4冊。
『十番斬り』
表題作「十番斬り」の壮絶さ、「同門の酒」の、どこなくほのぼのした風情、そして「逃げる人」。この1冊は粒ぞろいでした。

『波紋』
う~ん、因縁のすさまじきことよ。小兵衛の好みの女性も分かりませんなあ(笑)。かなり凝った短編が多かったような。

『暗殺者』
2冊目の長編。大治郎に勝るとも劣らぬ剣客が出てくるのでは、やはり短編に収まりきれますまい。この波川周蔵は良いですね~。

『二十番斬り』
おやおや、これも長編。しかもあの小兵衛さんが冒頭眩暈を起こすのだからびっくり。「短編のほうが…」と書いた私ですが、前言撤回この2編で長編の魅力にはまりました~。

剣客商売その5
2004・10・25
遂に剣客商売最終巻。あーあ、読み終わってしまった…。

『浮沈』
山崎勘之介…このキャラクターは異質ですね。しかしシリーズ最後の作品には相応しい人物かも。小兵衛さんや他の登場人物の将来にも触れてあって、思わず唸ってしまいました。でも…でももっと読みたかったなあ、このシリーズ。

『ないしょ ないしょ』(剣客商売番外編)
女性を主人公にした長編。小兵衛は時折顔を出すだけですが、流石の存在感。50代の小兵衛さんも良いですねえ。10代半ばで両親を亡くし下女となったお福の人生の凄まじきことよ…。これは早いとこ購入せねばなりませんな。

現在は同じく番外編の『黒白』中。こっちも面白いけれど、これを読了してしまったら、もう全て終わりなんだな…寂しいっ。

村田エフェンディ滞土録 

梨木香歩/著 角川書店

明治の頃、土耳古(トルコ)皇帝の招聘で歴史文化の研究の為に彼の地へ赴いた村田。
村田の下宿先は、少人数ながら人種の坩堝なのです。女主人のディクソン夫人は英国人、考古学者オットー氏は独逸(ドイツ)人、同じく考古学研究に来たディミトリスは希臘(ギリシア)人、下働きのムハマンドのみが土耳古人。その上的確な言葉を発して皆を戸惑わせる鸚鵡まで。しかし彼らは文化や宗教の違いを乗り越え、村田のかけがえの無い友垣となっていきます。
話は土耳古の風俗習慣、西欧との関わりや考古学への姿勢などが、村田の独白にて語られていきます。下宿の壁に宿る太古の神と、日本の稲荷、そして埃及(エジプト)の神の巴戦はとても面白い。姉妹編の「家守綺譚」を彷彿とさせるエピソードでした。 
しかし、楽しく読んでいられたのもつかの間、時代は不穏な様相を呈し始めて…
帰国後の村田の、最後の独白には不覚にも涙腺が緩んでしまいました…。
「家守綺譚」よりも重く悲しい小説ですが、読み応えがあり、「どちらかを選べ」となったらやはりこっちかも。文庫が出たら買おうかな。

村田エフェンディ滞土録 村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩 (2004/04/27)
角川書店
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