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タフの方舟 1・禍つ星 

ジョージ・R・R・マーティン/著 酒井昭伸/訳 ハヤカワSF文庫

惑星フロ・ブラナを巡り、周期的に疫病を流行らせる「禍つ星」。それは、1千年前に滅びたEECの遺産である、巨大な生物戦争胚種船だった…。


おんぼろ船で宇宙を旅していたタフは、この船をサルベージに来た一行に雇われるのですが、膨大な宝の山とも言うべき胚種船の争奪戦に巻き込まれてしまいます。

胚種船と言うだけあって、禍々しい生き物は次々出てくるのですが…帯にある「ジュラシック・パークの興奮」ってのはちょっと違うかな?いえ、コンピー軍団みたいな「子猫ちゃん」や恐竜さん、他にもいろいろ恐ろしげな生き物が乗船しておりますが(大丈夫、胚の状態です…大抵は)、彼らに対する主人公の対処の仕方がまるっきり違う。

巨体を揺すり、猫を抱き、銃を向けられても恐竜に襲われようとも、常に慇懃無礼な態度を崩さない主人公タフの姿には思わず苦笑。姿かたちはどっから見ても悪役、利に敏く時に冷徹、でも猫だけは溺愛してるという一筋縄では行かないタフですが、読み進むうちに妙に可愛く思えてくるのです。

この作品は数年に渡って書かれた連作短編であり、今月発売の「2・天の果実」とでワンセット。この巻には書き下ろしのプロローグの他「禍つ星」「パンと魚」「守護者」の3篇が収められています。
しかし、この非常に魅力的なシリーズが7編しか書かれていないとはこれ如何に。出来ればもっともっと書き続けて欲しいものであります。

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ジョージ・R.R. マーティン (2005/04/21)
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ねじの回転 

ヘンリー・ジェイムズ/著 南條竹則・他/訳 創元推理文庫

有名な古典ホラーですが、今まで機会がなく未読だったので、今回の新訳を機に購入しました。

ここに出てくる超常現象は、実は全くと言っていいほど怖くありません。それを期待して読んだら肩透かしでしょう。でも怖さは感じましたよ、全然別の意味で。

この小説に出てくる主人公の家庭教師ですが、彼女はヴィクトリア朝の道徳観念に凝り固まっています。貞節を守り、身分をわきまえ、ひたすら「正しく」生きることを他人にも強く求める、常に自分が正しいことを信じて疑わない牧師の娘。

彼女の性格を辿っていくうちに、もしかすると全ては彼女の妄想なのでは?との疑念が兆してきました。彼女と前任の家庭教師だったジェスルは一人の人間の裏と表ではないのか?そして、自分の中でつじつまを合わせる為のみに、あの悲劇が起きたのかも…。
ま、深読みはコレ位にして(笑)。
個人的に古い時代の話は好みなのですが、ここまで当時の道徳観念を押し出されると、感情移入して読むのは無理でありました…。

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ヘンリー・ジェイムズ (2005/04/09)
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仮面の真実 

バリー・アンズワース/著 磯部和子/訳 創土社

14世紀後半のイングランド。退屈な筆記仕事に嫌気がさしていた神学生のニコラスは、初夏の美しさに誘われ出奔してしまい無一文で放浪していたが、ふとしたことで旅芸人の一座と知り合い、役者として行動を共にすることになる。

その後、旅の途中に立ち寄った街で素寒貧になった彼らは、客を呼ぶ為に通常演じている道徳劇(聖書から題材をとったもの)ではなく、この地で起きたばかりの殺人事件を元に創作劇を演じることにするですが、この演劇が凄いです。最初は、事件後すぐに捕まった女性の犯行だと疑いもせず、彼女が如何にして殺人を犯したか?の劇だった筈なのですが、その後皆で聞き込みを重ね証言を検証していくうちに、事件の裏に隠されたものの存在に気づいていきます。与えられた役を演じることによって矛盾点が明らかになり、上演中に即興で筋立てを変え、次第に真実に近づいていく様子は臨場感に溢れ、時代背景とあいまって、独特の雰囲気を醸し出しています。

長編にしては短めではありますが、しっかりと書き込まれた時代背景や人物描写の巧さで、読後は非常に満足満足。謎解きはちょい簡単すぎたけれど、推理に重点を置いた小説ではないのでまあ良いでしょう。

著者はブッカー賞も受賞しており、英語圏ではかなり知名度がたかいようなのですが、邦訳はこれが初めてだそうです。でもこの面白さ、未訳のままにしておくなんて勿体無い!出来れば全作品を読みたい!…すっかりミーハー的ファンと化しております(笑)。でも面白かったんですよ~ホント。

仮面の真実 仮面の真実
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創土社
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文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! 

ジャスパー・フォード/著 田村源二/訳 ソニーマガジンズ

これは平行宇宙?舞台は1985年のイギリス、クリミア戦争は131年目に入り、泥沼化しています。なんと敵は帝政ロシア!
違うのはそれだけじゃなく、政治や警察機構も全く異質。そしてこの世界の娯楽の中心は文芸小説で、人皆すべからく本の虫なのです。いえ、人間じゃない正真正銘の「本の虫」まで出てきますよ(笑)。街角にはシェークスピアを暗誦する自動人形があるし、ディケンズやブロンテ姉妹の生家には観光客が押し寄せる。活字中毒者には夢のような世界であります。

この作品は、主人公で文学刑事のサーズデイが史上最悪の犯罪者ヘイディーズを追いかけるという、正統派警察小説になっているのですが、このヘイディーズが凄い。防犯カメラには写らないし、変装ならぬ超能力(らしきもの)で自分の姿を老女に見せるなんて朝飯前、ついでに銃で撃たれたって平気の平左。この史上最強の凶悪犯を如何にして取り押さえるのか?

ほら吹きを得意とする作家は多いけど、その誰にもひけをとりませんこの作者。

そうそう。この作品はかの古典「ジェイン・エア」を中心に展開するのですが、私はこれを14歳の時に(注:何年前かは聞かないように)読んだきりなのです。今覚えているのは切れ切れのエピソードと結末のみ。でも、ここに出てくる話はどうも覚えている内容と違っている…結末なんて全く記憶と違うし。まあ、最後まで読めば納得するのですが。お陰で中盤では自分の記憶に疑いを抱いてしまったぞ。本気で自分の脳が縮小したかと焦りましたわい(笑)。

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ジャスパー フォード (2005/09)
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ホミニッド-原人 

ロバート・J・ソウヤー/著 内田昌之/訳 ハヤカワSF文庫

ネアンデルタール人が支配種族となった世界から、実験中の事故により平行宇宙に転送させられた物理学者ポンター。その世界は、人口が多すぎ、自然が破壊された、クロマニヨン人が支配する世界だった。

この作品も、クロマニヨン人の文化とネアンデルタール人の文化を対比させ、ネアンデルタールの世界では消えうせた(ように見える)ポンターを殺害した容疑で共同研究者が裁判にかけられ、こっちの宇宙では暴行の被害に遭った女性の男性不信を絡め…と、相変わらずのサービス精神。でも、3部作の第一部であるせいか、説明が多く中身は薄いように感じます。それを補うのが、詳細に書き込まれたネアンデルタール社会。こちらから見ると、犯罪の撲滅に成功したパラダイスにも見えますが、徹底した管理社会であるがゆえの歪みも見受けられ、この作品の読みどころともなっています。脳味噌が軽く低脳で、しかも好戦的なクロマニヨン人。重い脳を持ち宗教を持たず、原罪や恥などという考え方に縛られることなく、管理に甘んじるネアンデルタール人。この両者の交流が、これからどちらの方向に向かうのか。ポンターと人間の関係はどのように変化して行くのか。それは続刊を待つしかないのですが…。少なくても今回は、3部作全てが刊行予定となっていますので一安心。『アフサン』で待ちぼうけを食わされた身としては、予定変更にならないことを祈るだけでありますなあ。しかし…副題の「原人」というのが分からない。進化の分岐点より数万年、平行世界のネアンデルタール人だってしっかり支配種族なのですけれど…。

ホミニッド-原人 ホミニッド-原人
ロバート・J. ソウヤー (2005/02)
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