FC2ブログ

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! 

ジャスパー・フォード/著 田村源二/訳 ソニーマガジンズ

これは平行宇宙?舞台は1985年のイギリス、クリミア戦争は131年目に入り、泥沼化しています。なんと敵は帝政ロシア!
違うのはそれだけじゃなく、政治や警察機構も全く異質。そしてこの世界の娯楽の中心は文芸小説で、人皆すべからく本の虫なのです。いえ、人間じゃない正真正銘の「本の虫」まで出てきますよ(笑)。街角にはシェークスピアを暗誦する自動人形があるし、ディケンズやブロンテ姉妹の生家には観光客が押し寄せる。活字中毒者には夢のような世界であります。

この作品は、主人公で文学刑事のサーズデイが史上最悪の犯罪者ヘイディーズを追いかけるという、正統派警察小説になっているのですが、このヘイディーズが凄い。防犯カメラには写らないし、変装ならぬ超能力(らしきもの)で自分の姿を老女に見せるなんて朝飯前、ついでに銃で撃たれたって平気の平左。この史上最強の凶悪犯を如何にして取り押さえるのか?

ほら吹きを得意とする作家は多いけど、その誰にもひけをとりませんこの作者。

そうそう。この作品はかの古典「ジェイン・エア」を中心に展開するのですが、私はこれを14歳の時に(注:何年前かは聞かないように)読んだきりなのです。今覚えているのは切れ切れのエピソードと結末のみ。でも、ここに出てくる話はどうも覚えている内容と違っている…結末なんて全く記憶と違うし。まあ、最後まで読めば納得するのですが。お陰で中盤では自分の記憶に疑いを抱いてしまったぞ。本気で自分の脳が縮小したかと焦りましたわい(笑)。

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! 文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!
ジャスパー フォード (2005/09)
ソニーマガジンズ
この商品の詳細を見る

ホミニッド-原人 

ロバート・J・ソウヤー/著 内田昌之/訳 ハヤカワSF文庫

ネアンデルタール人が支配種族となった世界から、実験中の事故により平行宇宙に転送させられた物理学者ポンター。その世界は、人口が多すぎ、自然が破壊された、クロマニヨン人が支配する世界だった。

この作品も、クロマニヨン人の文化とネアンデルタール人の文化を対比させ、ネアンデルタールの世界では消えうせた(ように見える)ポンターを殺害した容疑で共同研究者が裁判にかけられ、こっちの宇宙では暴行の被害に遭った女性の男性不信を絡め…と、相変わらずのサービス精神。でも、3部作の第一部であるせいか、説明が多く中身は薄いように感じます。それを補うのが、詳細に書き込まれたネアンデルタール社会。こちらから見ると、犯罪の撲滅に成功したパラダイスにも見えますが、徹底した管理社会であるがゆえの歪みも見受けられ、この作品の読みどころともなっています。脳味噌が軽く低脳で、しかも好戦的なクロマニヨン人。重い脳を持ち宗教を持たず、原罪や恥などという考え方に縛られることなく、管理に甘んじるネアンデルタール人。この両者の交流が、これからどちらの方向に向かうのか。ポンターと人間の関係はどのように変化して行くのか。それは続刊を待つしかないのですが…。少なくても今回は、3部作全てが刊行予定となっていますので一安心。『アフサン』で待ちぼうけを食わされた身としては、予定変更にならないことを祈るだけでありますなあ。しかし…副題の「原人」というのが分からない。進化の分岐点より数万年、平行世界のネアンデルタール人だってしっかり支配種族なのですけれど…。

ホミニッド-原人 ホミニッド-原人
ロバート・J. ソウヤー (2005/02)
早川書房
この商品の詳細を見る

殺人展示室 

P・D・ジェイムズ/著 青木久恵/訳 ハヤカワポケットミステリ

 第一次大戦と第二次大戦に挟まれた数十年間をテーマにしたデュペイン博物館。貴重な初版本や絵画も展示されているが、人々の興味が集まるのは、この時代の有名な犯罪を扱った「殺人展示室」だった。その博物館で実際に殺人事件が起こる。しかも、事件の状況や、その場から逃げ出すように去った青年の残した言葉が、展示の中の有名な事件に奇妙なくらい酷似していたのだ… 前作はあまり好みではなかったのですが、今回はしっかり面白かったです。相変わらず起伏に乏しい展開ではあるものの、お得意の人物設定、性格描写が特に生きているように思いました。タリーとライアンのぎくしゃくした交流での、エゴイズムとキリスト教的博愛精神のせめぎ合いなんて、やはりこの人ならではですね。このあたりの描写や、ミス・ゴドビーの過去の描き方は流石に巧い。第二の殺人には少々安易な感じも受けましたが、一人ひとりの性格を細かに描写した上で展開する物語はやはり読み応えがあります。でも。でもですよ。個人的にはコーデリア・グレイの心を捉えた「孤高の詩人」ダルグリッシュ警視長よ永遠に!なのでありますが…次回作で彼はどうなってしまうのでしょう?余りに急激な変化の予感。何か読むのが恐いような気もします…でも気になるっ。

殺人展示室 殺人展示室
P.D. ジェイムズ (2005/02)
早川書房
この商品の詳細を見る

邪魔をしないで 

ミュリエル・スパーク/著 深町真理子/訳 早川書房

ひたすらに「その時」を待ち続ける使用人たち。彼らは既に、記者に与える談話を考え、回想録まで練っています。他の名家からも引く手あまたの有能な彼らですが、彼らの才能はこのような場合でも遺憾なく発揮されているようです。次々に訪れる邪魔者を排除しつつ「その時」に備えて、深夜着々と準備をしている彼らの姿は外の嵐とあいまって、恐ろしさと同時に紛れもない滑稽味をも湛えています。
古典的な演劇手法『場の一致 時の一致 筋の一致』に則り、ブラックユーモアに溢れたこの小説を読んでいると、まるで舞台劇を見ているかのように登場人物たちの動きや表情が浮かんできます。そして伏線の巧妙さはさすがスパーク。
この作品、舞台化はされていないのかな?是非是非観たい、出来れば執事はサー・ジョン・ギールグッドで…って無理か(笑)。

シンポジウム 

同棲中の画家と未亡人が、友人を集めて開いたちょっとしたパーティー。話題の中心は、ある富豪女性の一人息子の結婚相手について。まあ、ごく普通の親睦会です。しかしここに集う人々は、普通のようでいて、なんか半歩ずれている人ばかり…留守中に泥棒の被害に遭い「これは強姦だ!暴行だ!」と騒ぎ立てる男。彼にうんざりしている妻は、夫の悪口を先妻の娘に書き送り、お年頃の青年はぬいぐるみを抱いて寝る。

この本に出てくる人物の中で、実際に異常者の烙印をおされているのは、病院を出たり入ったりしているマグナスひとりだけですが…
このマグナスのかき方がなんとも凄い。「実際に罪を犯した奴は後ろめたくは思わないもんだ。有頂天になり、勝ち誇り、自分を大したもんだと思うさ」との台詞を吐く下りなんて、彼の爛々と光る瞳を現実に覗き込んでしまったような錯覚さえ覚えます。

ストーリーは富豪の息子(ぬいぐるみ青年)を射落としたマーガレットを巡って静かに淡々と進んでいくのですが、なにげなく記された言葉に隠された伏線、一人ひとりの性格描写の緻密さはもう職人芸と言えるかも。
しかしここに集う面々には、プラトンの「饗宴」の方々もびっくりでしょうなあ…。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。