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比類なきジーヴス 

P・G・ウッドハウス/著 森村たまき/訳 国書刊行会

『大抵の人は執事にはズボンの折り目をつけさせるだけで、家事全般を取り仕切らせることはない。しかしジーヴスは違うのだ。うちにきた最初の日から、僕は彼を一種の先導者、哲学者、そして友人と見なしている。』

もう期待を上回る面白さでした。買うのを躊躇していた時間の勿体無かったことっ。
序盤のこのバーティーの台詞どおり、ジーヴスは何をやらせても完璧。バーティーがどんなトラブルに巻き込まれても、ジーヴスは慌てず騒がず冷静に、そして簡単に解決してしまいます。英国特産(笑)、恐るべき叔母さんにだって負けやしない!
数ある英国小説の中でも、この“叔母さん族”に勝てる人物は珍しいかも。

使用人の立場ながらも天下一品の頭脳は、一瞬『黒後家蜘蛛の会』のヘンリーを思い出させますが、ジーヴスが彼と決定的に違うのが「利に敏い」ところ。主人のために解決しているのは間違いないのですが、その途中で何時の間にかちゃっかり利益を得ています。それが、主人の気にいらない靴下を処分するためだけであっても(笑)。その人間味がまた良いです。

主人のバーティーだって単に金持ちなだけじゃなく、古典だってすらすら暗誦しちゃう知識人なのですが…やることなすことどう見てもおマヌケ(笑)。
まあ、現代だから彼の博識に感服するのであって、この時代には当たり前の紳士のたしなみだったのでしょうねえ。

本書はウッドハウスコレクション・全3冊の第一巻です。6月には「よしきた、ジーヴス」その後「それゆけ、ジーヴス」が刊行予定。はっ、早く読みたい~。
兎にも角にも、英国文学、少々毒の効いたユーモア小説がお好みならば是非どうぞ!

比類なきジーヴス 比類なきジーヴス
P.G. ウッドハウス (2005/02)
国書刊行会
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ヴィーナス・プラスX 

シオドア・スタージョン/著 大久保譲/訳 国書刊行会

ごく当たり前の生活を送っていた27歳のチャーリー・ジョンズは、ある日突然謎の世界“レダム”で目を覚ます。言葉も生活習慣も全く違う異形のレダム人たちは彼に、「あなたに私たちの文化を評価して貰いたい」と告げる。

「元居た世界に送り返す」との言葉を信じ、彼らの導くままにこの世界を見て歩くチャーリー。両性具有であり、たった一つの文化の中で暮らすレダム人には、偏見も差別もありません。「罰」の概念すら存在しないこの世界。しかもエネルギー問題は解決済みであり生活水準は非常に高い。それでも農業と手工業を守り、地に足の着いた生活をしている彼らを見ると、ここは完璧なユートピアと思えます。

この作品の発表された1960年は、東西の冷戦がピークを向かえ、女性蔑視や人種差別がやっと問題視されるようになった時期です。その頃に読めばかなりショッキングな内容だったでしょう…せめて冷戦終結前に読みたかったなあ。
それでも性差別が根強く残る地域は多いし、宗教や文化的差異に起因する数々の問題点は今の世でも殆ど解決されていないし、その点を考えるとやはりここは理想の世界かも。

物語の最後に明かされる真実も、この時代のSFを読みなれてしまっていると意外性は薄いかな?でも、そこへ至るまでの伏線の巧妙さには脱帽です。また、セダムの話と現代アメリカ(1950年代の)の生活が交互に語られる構成は、発表から40数年後にやっと読めた身にはとても有難いですね。当時の人々のものの考え方を再認識した上で読むのと、現代の感覚で読むのとではかなり違う印象が残ってしまうでしょうし。…勿論スタージョンがそこまで予測していたわけではないでしょうけど(笑)。

これまで発売された長編のような峻烈さは薄く、また時代背景が大きな意味を持っているため、普遍的という意味でも違ってくるかも…。
でも、この時代のSFをこよなく愛する身としては、久々に良い作品を読んだ!という満足感は充分に得られました。

そうそう、忘れてはいけないのが最後のほうに出てくる「フィロスの論文」。ここにはスタージョンの作品全体に共通するテーマが書かれています。愛、そして全てのものを取り去った後に残る人間の本質。これを念頭において、また他の作品を読み返してみようっと。

ヴィーナス・プラスX ヴィーナス・プラスX
シオドア スタージョン (2005/05)
国書刊行会
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タフの方舟 1・禍つ星 

ジョージ・R・R・マーティン/著 酒井昭伸/訳 ハヤカワSF文庫

惑星フロ・ブラナを巡り、周期的に疫病を流行らせる「禍つ星」。それは、1千年前に滅びたEECの遺産である、巨大な生物戦争胚種船だった…。


おんぼろ船で宇宙を旅していたタフは、この船をサルベージに来た一行に雇われるのですが、膨大な宝の山とも言うべき胚種船の争奪戦に巻き込まれてしまいます。

胚種船と言うだけあって、禍々しい生き物は次々出てくるのですが…帯にある「ジュラシック・パークの興奮」ってのはちょっと違うかな?いえ、コンピー軍団みたいな「子猫ちゃん」や恐竜さん、他にもいろいろ恐ろしげな生き物が乗船しておりますが(大丈夫、胚の状態です…大抵は)、彼らに対する主人公の対処の仕方がまるっきり違う。

巨体を揺すり、猫を抱き、銃を向けられても恐竜に襲われようとも、常に慇懃無礼な態度を崩さない主人公タフの姿には思わず苦笑。姿かたちはどっから見ても悪役、利に敏く時に冷徹、でも猫だけは溺愛してるという一筋縄では行かないタフですが、読み進むうちに妙に可愛く思えてくるのです。

この作品は数年に渡って書かれた連作短編であり、今月発売の「2・天の果実」とでワンセット。この巻には書き下ろしのプロローグの他「禍つ星」「パンと魚」「守護者」の3篇が収められています。
しかし、この非常に魅力的なシリーズが7編しか書かれていないとはこれ如何に。出来ればもっともっと書き続けて欲しいものであります。

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF
ジョージ・R.R. マーティン (2005/04/21)
早川書房
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ねじの回転 

ヘンリー・ジェイムズ/著 南條竹則・他/訳 創元推理文庫

有名な古典ホラーですが、今まで機会がなく未読だったので、今回の新訳を機に購入しました。

ここに出てくる超常現象は、実は全くと言っていいほど怖くありません。それを期待して読んだら肩透かしでしょう。でも怖さは感じましたよ、全然別の意味で。

この小説に出てくる主人公の家庭教師ですが、彼女はヴィクトリア朝の道徳観念に凝り固まっています。貞節を守り、身分をわきまえ、ひたすら「正しく」生きることを他人にも強く求める、常に自分が正しいことを信じて疑わない牧師の娘。

彼女の性格を辿っていくうちに、もしかすると全ては彼女の妄想なのでは?との疑念が兆してきました。彼女と前任の家庭教師だったジェスルは一人の人間の裏と表ではないのか?そして、自分の中でつじつまを合わせる為のみに、あの悲劇が起きたのかも…。
ま、深読みはコレ位にして(笑)。
個人的に古い時代の話は好みなのですが、ここまで当時の道徳観念を押し出されると、感情移入して読むのは無理でありました…。

ねじの回転 -心霊小説傑作選- ねじの回転 -心霊小説傑作選-
ヘンリー・ジェイムズ (2005/04/09)
東京創元社
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仮面の真実 

バリー・アンズワース/著 磯部和子/訳 創土社

14世紀後半のイングランド。退屈な筆記仕事に嫌気がさしていた神学生のニコラスは、初夏の美しさに誘われ出奔してしまい無一文で放浪していたが、ふとしたことで旅芸人の一座と知り合い、役者として行動を共にすることになる。

その後、旅の途中に立ち寄った街で素寒貧になった彼らは、客を呼ぶ為に通常演じている道徳劇(聖書から題材をとったもの)ではなく、この地で起きたばかりの殺人事件を元に創作劇を演じることにするですが、この演劇が凄いです。最初は、事件後すぐに捕まった女性の犯行だと疑いもせず、彼女が如何にして殺人を犯したか?の劇だった筈なのですが、その後皆で聞き込みを重ね証言を検証していくうちに、事件の裏に隠されたものの存在に気づいていきます。与えられた役を演じることによって矛盾点が明らかになり、上演中に即興で筋立てを変え、次第に真実に近づいていく様子は臨場感に溢れ、時代背景とあいまって、独特の雰囲気を醸し出しています。

長編にしては短めではありますが、しっかりと書き込まれた時代背景や人物描写の巧さで、読後は非常に満足満足。謎解きはちょい簡単すぎたけれど、推理に重点を置いた小説ではないのでまあ良いでしょう。

著者はブッカー賞も受賞しており、英語圏ではかなり知名度がたかいようなのですが、邦訳はこれが初めてだそうです。でもこの面白さ、未訳のままにしておくなんて勿体無い!出来れば全作品を読みたい!…すっかりミーハー的ファンと化しております(笑)。でも面白かったんですよ~ホント。

仮面の真実 仮面の真実
バリー アンズワース (2005/01)
創土社
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