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ポケットから出てきたミステリー 

カレル・チャペック/著 田才益夫/訳 晶文社

この本は、数人の男性が殺人から盗難、詐欺などのあらゆる事件について、前の人の話から連想されたテーマで次の人が語り始める形式になっています。

でもこれは謎解きではなく、事件の経緯や犯罪を犯した人の信念、心情をユーモラスに、時にシニカルに綴っているので、事件そのものは重くてもとても爽やかな読後感。サボテンを宗教のように崇めるマニアたち、誘拐された赤ん坊の見分け方、判読不能な電報によって引き起こされた家族内の騒動など、人情味溢れた作品ばかりの、折に触れ何度も読み返したくなるような、笑いと美しい人間性に溢れた小品集です。

特に「人間の最後のもの」は、生きる意味そのものを問いかける、しかし押し付けがましさを微塵も感じさせない素晴らしい作品でした。

ポケットから出てきたミステリー ポケットから出てきたミステリー
カレル チャペック (2001/11)
晶文社
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よしきた、ジーヴス 

P・G・ウッドハウス/著 森村たまき/訳 国書刊行会 遂にバーティーの反乱です。理由は「独裁者ジーヴスからお気に入りのメスジャケットを守るため」。 ちなみに“メスジャケット”とは『夏季外洋航路における船上ディナーパーティーなどに用いられることがある。もともとは海軍の礼装のひとつで、正式ディナーの席で着られたものである。スタイルはイブニングコートのテールの部分を切り落とした形の上着で、フロントには掛けるべきボタンがない。素材は白麻もしくは白のサマーウールを使用する。』 …だそうです。知らなかった(笑)。 以前にも紫色の(!)靴下やど派手なスパッツを、彼の助言と引き換えに処分させられた苦い記憶を持つバーティー。今回は、ジーヴスの助けを求めてきた人々に「ジーヴスはコンディションが悪い。だから自分に任せろ」と大見得を切ってしまうのです。ジーヴスの助けを借りたが最後、買ったばかりのお気に入りジャケットには二度とお目にかかれなくなること間違いなしですからね。 結果…まあ予想通りではありますが(笑)。バーティーが問題を解決しようと足掻けば足掻くほど、巻き込まれる人数も増え事は更に複雑に。いやー、面白かった! 解説には「短編のスピーディーさに慣れた読者には冗漫、冗長と感じられるかも知れない」とありましたが、個人的には長編のゆったりペースがとても気にいりました。ちょっとした描写、細かい細工の緻密なこと!ゆっくり時間をかけて楽しまねば勿体無い作品であります。 でも…「Right Ho」が「よしきた、ホー」と訳されているのにはちょっと違和感かな…。

 

よしきた、ジーヴス よしきた、ジーヴス
P.G. ウッドハウス (2005/06)
国書刊行会
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アゴールニンズ 

ジョー・ウォルトン/著 和爾桃子/訳 早川書房

父アゴールニン啖爵(だんしゃく)の死去により、仲の良い姉妹セレンドラとヘイナーは別々に暮らすことに。別れ際、彼女たちは「先に良い結婚をしたほうがもう一人を引き取って一緒に暮らそう」と誓い合います。
そう、女性には権利がなく、上流階級の子女は多額の持参金つきで身分の高い家に嫁ぐのが一番の幸福であり、支配階級と一般庶民の間には決して越えられない壁が存在する…

というと、“ヴィクトリア朝の女性小説か?”と思われるでしょうし、確かに時代背景はヴィクトリア時代そのままなのですが、実は登場するのは全てドラゴン。

女性は、娘時代は体中が輝く黄金色をしています。しかし男性と二人きりの時にある程度以上に接近してしまうと、婚姻色であるピンクに変化してしまいます。一旦変化したらさあ大変!その男性と結婚するか、でなければ一生独身のまま世間の冷たい目に耐えるか第2夫人として日陰の身となるか。
そして無事結婚したとしても、出産(勿論タマゴ)は命がけ。初産は兎も角、2度、3度と出産を重ねるごとに危険は増してゆくのです。


このドラゴンの生態は、この小説の筋に密接に関わってきます。それもその筈、著者は「ヴィクトリア朝の原理原則が仮に事実であり、避けて通れない生物学の法則であったなら、世界はどんなふうになるか」と考え、小説に仕立てたのですから。支配階級による労働者の搾取までもが生物学に則ったものになっているところなんて流石!です。


しかしストーリーは如何にもヴィクトリア時代の恋物語なのですよねえ(笑)。男尊女卑社会で生きる淑女の哀しさ、身内の確執や淑女の誘拐、更には労働者階級の悲劇、宗教対立までと盛りだくさんでありながらも、すっきりとまとまって煩い感じはなく、世界観もしっかり構築されて読み応えは充分。でも、お約束の展開はちょっと退屈に感じてしまうかな?いえ、ちゃんと現代風の味付けは施してあるのですが。

一風変わった恋愛小説としてはお勧めですし、最後まで結構楽しく読めたのですが、これまでの世界幻想文学大賞受賞作のような衝撃はありませんでした。いや、これまでがあまりにマニアックすぎたのか(笑)。でも、今までこの賞の受賞作が重く感じられたような人にも気軽に薦められる、楽しいファンタジー小説でありました。

アゴールニンズ アゴールニンズ
ジョー・ウォルトン (2005/06/09)
早川書房
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暴徒裁判 

クレイグ・ライス/著 山本やよい/訳 ハヤカワミステリ文庫

もうふた昔くらい前に読み漁ったライス。粋なユーモアとエネルギーに溢れた、でもどことなく暗さの垣間見える作風に夢中になったものでした。

今回、ポケミスで買い逃していた「暴徒裁判」の文庫化で、久しぶりにこの3人組に再会です。よれよれ酔いどれ弁護士マローン、赤毛のジェークと世界最高の美女ヘレンのジャスタス夫妻、おおおお懐かしいっ!

今回の舞台はシリーズ初の(?)田舎町。住民も少なく、殆どが顔見知りという中では、華やかなシカゴの風俗を背負ったジェークとヘレンは異質の存在。雨に足止めされた役場で殺人事件が起こると、周囲の疑惑の眼差しは“怪しげなよそ者”へ向かうことに…。
その所為でしょうか、一見いつものユーモアに溢れた作品のようでありながら、他のシカゴを舞台にした作品とはユーモアの質が少々違うようです。

マローンが夜の闇の中で「人を殺そうとしているものが頭を冷やして、自分が殺したい相手から奪おうとしているこの世の素晴らしいものの数々について考えてみるなら、殺人などと言うものはもう2度とおきないに違いない」と考えるシーン、そして最後の暴徒に告げる重い言葉。ライスの、洒脱なジョークの陰に潜んだ哀しさ、やるせなさが際立った作品でありました。

個人的には麗しのアンナ・マリー「幸運な死体」、普通は苦手な子供が主人公の作品だけれどこれは最高「スイートホーム・殺人事件」に対張るお気に入りになりそうです。

暴徒裁判 (クラシック・セレクション) 暴徒裁判 (クラシック・セレクション)
クレイグ・ライス (2005/05/25)
早川書房
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ヨット・クラブ 

デイヴィッド・イーリイ/著 白須清美/訳 晶文社

1960年代から70年代にかけて発表された作品を集めた短編集。表題作の「ヨットクラブ」は何かのアンソロジーで既読でしたが、他の作品は全くの未読でした。長編の邦訳もあるのに今までノーチェックだったとは…悔しいっ!

…と思ってしまうくらいとっても気に入ったのです。かの名シリーズ「異色作家短編集」に入っていても当然と思えるような奇才ぶり。当たり前の生活の中でふと気づくと、何時の間にか異次元を彷徨っているのに気づいたような…ある時は底なしの恐さを、ある時はシニカルな笑いをもたらしてくれます。

一作ごとに感想を書きたいのはやまやまですが、未読の方もいらっしゃるでしょうし、こういう作品は是非予備知識無しで読んで頂きたい!

人類史上初の火星有人探査機に仕掛けられた罠、自分が神である事を確信している男、隣人愛に溢れた人々の善意の怖ろしさ…
日常的でありながらも不条理で、底知れぬ恐ろしさと思わぬ楽しさに出会える16の短編。
第二短編集「大尉のいのしし狩り」も近日刊行予定とのことです。今から楽しみ~。でも何日に出るのかな?買い忘れのないように今から予約しておこうっと。

ヨットクラブ ヨットクラブ
デイヴィッド イーリイ (2003/10)
晶文社
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