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剣客商売 

剣客商売
池波正太郎/著 新潮文庫
数年前から読書仲間に進められていた「剣客商売」。時代物は好きなのだが、全16巻に恐れをなしてしまい、読もう読もうと思いつつも手を出しかねていたのだ。しかしここのところ、出先での待ち時間が多いので、そこで読むのに丁度いいかも?と思い、第一巻を借りてきた。
…いや~、参りました!途中で用事が出来ても読み止められない。他の時代物ではこんなことはなかったのに。兎に角面白いのである。小兵衛の人物設定なんて脱帽するしかない。60の小柄な好々爺で、40も歳の違う愛人(後に女房)おはるとじゃれあい、剣客としては一級品。ああ、なんと捉えどころのない、魅力的なお方なのでしょう(既に惚れてる)。第一巻の中では「まゆ墨の金ちゃん」での小兵衛が良かったですねえ。剣客と親心の板ばさみ、この描写の細やかなことよ。あー、続きが読みたいっ!
 
剣客商売その2
2004・10・18
昨日今日で4冊読了。中毒症状最高潮です♪
『天魔』
これは何といっても「約束金二十両」が面白かった!平内太兵衛さん、この後も出てくるように書いてありましたが何巻なのかな?益々シリーズ制覇に熱が入りますわい(笑)。
『白い鬼』
これは暗い話が多い…でも嫌いじゃないんですよね、同情の余地の無い悪人はしっかりやっつけてくれるし(笑)。
しかし、腕を切り飛ばされてしまう悪人さんの多いこと。この世界にリチャード・キンブルが迷い込んだら、“片腕の男”がいすぎて頭抱えるでしょうねえ。
『新妻』
「鷲鼻の武士」にまず大笑いしちゃいました。どっか抜けてる人って大好きなのです。今後も出てきそうだし、楽しみ。他は重い話が多いけれど、しみじみと読めました。
『隠れ蓑』
やはりお気に入りは「徳どん、逃げろ」。辛酸を舐めてきたらしい、その上強盗を生業とするのに憎めないですね、八郎吾どん。実は密かに小兵衛さんちに押し入る場面を期待してたのですが、残念(笑)。そして「隠れ蓑」に涙…。こういうのって弱いワタシ。

眠い… 剣客商売その3
2004・10・21
何故眠いかって?聞かないで下さいよお今更(笑)。
『狂乱』
いや~、何とも虚しいけど、でも読後感が悪くならないところが良いですねえ。「狂乱」は特に。
『待ち伏せ』
若き日の小兵衛が垣間見られる1冊です。大治郎も父親に似てきたような…。彼も30年後には好々爺になるのだろうか(笑)。
『勝負』
小兵衛も遂におじいちゃま。だからか、ほのぼのする話が目立ちます。「その日の三冬」は寂しかったけれど…三冬さん、以前はあまり好みではなかったけど、最近好感度アップです~。
『春の嵐』
わぉ・長編ですか。流石に長編も面白いっ。でも、短編のリズムに慣れてしまったし…やっぱり短編でしみじみが好みですなあ。これは他のと離してじっくり読んだほうがいいのかも。

剣客商売その4
2004・10・22
昨日今日でさらに4冊。
『十番斬り』
表題作「十番斬り」の壮絶さ、「同門の酒」の、どこなくほのぼのした風情、そして「逃げる人」。この1冊は粒ぞろいでした。

『波紋』
う~ん、因縁のすさまじきことよ。小兵衛の好みの女性も分かりませんなあ(笑)。かなり凝った短編が多かったような。

『暗殺者』
2冊目の長編。大治郎に勝るとも劣らぬ剣客が出てくるのでは、やはり短編に収まりきれますまい。この波川周蔵は良いですね~。

『二十番斬り』
おやおや、これも長編。しかもあの小兵衛さんが冒頭眩暈を起こすのだからびっくり。「短編のほうが…」と書いた私ですが、前言撤回この2編で長編の魅力にはまりました~。

剣客商売その5
2004・10・25
遂に剣客商売最終巻。あーあ、読み終わってしまった…。

『浮沈』
山崎勘之介…このキャラクターは異質ですね。しかしシリーズ最後の作品には相応しい人物かも。小兵衛さんや他の登場人物の将来にも触れてあって、思わず唸ってしまいました。でも…でももっと読みたかったなあ、このシリーズ。

『ないしょ ないしょ』(剣客商売番外編)
女性を主人公にした長編。小兵衛は時折顔を出すだけですが、流石の存在感。50代の小兵衛さんも良いですねえ。10代半ばで両親を亡くし下女となったお福の人生の凄まじきことよ…。これは早いとこ購入せねばなりませんな。

現在は同じく番外編の『黒白』中。こっちも面白いけれど、これを読了してしまったら、もう全て終わりなんだな…寂しいっ。

村田エフェンディ滞土録 

梨木香歩/著 角川書店

明治の頃、土耳古(トルコ)皇帝の招聘で歴史文化の研究の為に彼の地へ赴いた村田。
村田の下宿先は、少人数ながら人種の坩堝なのです。女主人のディクソン夫人は英国人、考古学者オットー氏は独逸(ドイツ)人、同じく考古学研究に来たディミトリスは希臘(ギリシア)人、下働きのムハマンドのみが土耳古人。その上的確な言葉を発して皆を戸惑わせる鸚鵡まで。しかし彼らは文化や宗教の違いを乗り越え、村田のかけがえの無い友垣となっていきます。
話は土耳古の風俗習慣、西欧との関わりや考古学への姿勢などが、村田の独白にて語られていきます。下宿の壁に宿る太古の神と、日本の稲荷、そして埃及(エジプト)の神の巴戦はとても面白い。姉妹編の「家守綺譚」を彷彿とさせるエピソードでした。 
しかし、楽しく読んでいられたのもつかの間、時代は不穏な様相を呈し始めて…
帰国後の村田の、最後の独白には不覚にも涙腺が緩んでしまいました…。
「家守綺譚」よりも重く悲しい小説ですが、読み応えがあり、「どちらかを選べ」となったらやはりこっちかも。文庫が出たら買おうかな。

村田エフェンディ滞土録 村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩 (2004/04/27)
角川書店
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紙葉の家 

マーク・Z・ダニエレブスキー/著 嶋田洋一/訳 ソニーマガジンズ

アパートの一室で、孤独な老人が死んだ。そのアパートに住む友人に頼まれ、部屋の片づけを手伝うことになったジョニーは、そこでおびただしい数の紙束を見つける。そこに書かれていたのは、『ネヴィットソン記録』と名づけられた記録映画の解説だった。
物語は、『ネヴィットソン記録』の内容と、ジョニーの手記が交互に進む形になっている。『ネヴィットソン記録』には、関係を修復しようと引っ越してきた写真家ウィル・ネヴィットソンの一家が、新しい家で体験した恐ろしい事件が事細かに記されている。外壁よりも長い室内、突如出現した廊下、その奥にある果てしない虚無…その上ネヴィットソンのふたりの子供たちが、全く同じに真っ黒の廊下の絵を何枚も描くのだ。
これだけでも充分に奇怪なのに、ばらばらの紙片に記されたこの記録をまとめようとする青年ジョニーの精神が次第に崩壊する様は同じように壮絶である。虚無の、果てしない暗闇の恐ろしさ。確固とした拠り所がひとつも無い不安定さ。

縦書きだった文章が横書きになり、天地が逆に書かれ、鏡文字になり棒線で消され…。活字をひたすら追い続け、本をぐるぐる回し、鏡に映していると、小説を読んでいるのだということを忘れ、この虚無が現実のものとして迫ってくるように感じられる。これ、実は真面目に恐かった…
そして、やっと『ネヴィットソン記録』から抜け出しほっとするのもつかの間、最後の、ジョニーの母親の手記でまた混沌に引きずり込まれるのだ。
「この紙葉をめくる者、すべての希望を捨てよ」…全くその通り。

装丁はとっても綺麗なのだけど、この厚さと重さ。ぐるぐる回しながら読むのは、特に借り本なので神経使うし。まっこと辛かったっ(笑)。注釈の細かい活字が何ページも続くし。
しかしそれだけのことはある。一部変態本との声もあり、勿論充分に頷けるのだが(笑)滅多なことでは感服しない活字中毒者でも諸手を挙げて「参りましたっ!」と言うしかない本だと思う。

紙葉の家 紙葉の家
Mark Z. Danielewski、嶋田 洋一 他 (2002/12)
ソニーマガジンズ
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山椒魚戦争 

カレル・チャペック/著 栗栖継/訳 ハヤカワSF文庫

スマトラ諸島の小島で、謎の生物が発見される。両棲で人懐こい、山椒魚に似ているが直立歩行するそれらを発見したヴァン・トフ船長は、真珠とりに山椒魚たちを使おうと思いつく。
最初は動物を飼いならして使役する程度のことだった筈なのに、山椒魚たちは言葉を話し出し、農業は山椒魚用の食物生産に依存、知識人たちは山椒魚の権利を確立すべく運動を始め、企業は海の開発のために山椒魚に機械や爆発物を提供し…
全ては終末に向けて必然的に進んでいく。巻末にチャペックが書いているとおり、不可避であろうラスト。個人的に風刺的な作品はあまり好みではないのだが、そんなことは言っていられない、面白くて止められないのだ。
この小説は1936年に書かれたため、各国の主張は当時の世相を反映したものとなっているが、人間の行動は政治情勢がどうあれ結末は変わらないんじゃないだろうか?舞台を現代に移しても、やっぱりこの道を進むことになるんだろうな…。
第二次大戦前夜のナチスの脅威を描いたとされるこの小説だが、今ではあまり感じ取ることが出来ない。どちらかといえば、何時の時代だろうと人間のやることって変わっていないんだな…と思う。やはり作者の執筆動機がなんであれ、どんな時代であれ、普遍性の高い物語なのだろう。

ドイツとロシアで出版された翻訳では、自国に都合の悪いくだりは削除されているらしい。なんかこれ読むと理解できるなあ。日本はその頃まだヨーロッパでは重要視されていなかったので、削除したくなるほどの描かれ方はしていない。お陰で完訳で読めるのである…嬉しいけれどちょっとフクザツかも(笑)。

山椒魚戦争 山椒魚戦争
カレル チャペック (2003/06/13)
岩波書店
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白い果実 

ジェフリー・フォード/著 山尾悠子・他/訳 国書刊行会

独裁者ビロウの内面から作り上げられた「理想形態市」。恐怖に支配されているこの街の、ビロウの信任も厚い一級観相官クレイは、不死をもたらすという「白い果実」の消失事件を調査する為、属領へと赴く。死後の身体さえも搾取される、貧しい属領の住民たちと、軽蔑のみで彼らと接するクレイ。このクレイの人物像には驚かされた。思わず苦笑を誘われる程に、極限まで肥大した自己愛。他人は全て外観を数値化した観相学的特長のみで分類され、彼らの人間性も発するお世辞に含まれる皮肉も、クレイの心には届かない。そして時折挟み込まれる彼の苦渋と裏切りに満ちた過去…。幻想小説ではあるけれど、描かれているのは重苦しく逃げ場を閉ざされた幻想である。しかし、流麗な文体と、二転三転する魅惑的なストーリー、その上諧謔的でありコミカル、冒険活劇風ですらある物語。読み始めたらもう途中下車は不可能なので、興味を持たれた方は時間のある時に取り掛かって欲しい。一応の解決をもって終わる本書だが、疑問や謎は未解決のまま。 …と思いきや、やはり続編があるらしい。後書きによると、この物語は全3巻で完結するとのこと。翻訳の山尾悠子氏には出来れば本人の新しい作品を期待したいところだが、この続きを待たされるのも辛すぎる。その上本書で既に山尾氏の文体が頭に刻み込まれてしまったので、訳者を変えるなどもってのほか。ジレンマです…それも「理想形態市」の偽楽園のように逃げ場のない。ひたすらに待つしかないです…。

白い果実 白い果実
ジェフリー フォード (2004/08)
国書刊行会
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