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絶望 

ウラジミール・ナボコフ/著 大津栄一郎/訳 白水社

おはなさんの強烈お薦めで、遂に初ナボコフです。

倒叙ものなので粗筋は省きますが。
主人公へルマン、何と言ってもこのヒトが凄い。
自分以外、自分の目に映る世界以外のものは全く見えていないのだ。

延々と続く独白はひたすら自分のこと。
妻や親戚も、「自分の目にこう映る」という存在に過ぎず、一人の自立した人間として見ることはない。「自分は嘘つきである」と述べているが、嘘と言うより妄想か。自己を粉飾し、陶酔している様は滑稽である。周りの人間たちは、自分が見せたいと思っている姿を丸ごと信じていると思い込んでいる様も滑稽である。更に、周囲で起きていることに対して、あれほどに歴然としていながらも主人公の目には全く入っていない。もう滑稽というより気の毒になってくる…

「亡命作家に読ませたい」と願うこの手記は、常に読者を念頭において綴られている。しかし読者は彼が絶対に見ようとしない現実を知らされる。
「え、そこで信じちゃマズイんじゃないの?」
「あー、それは駄目絶対駄目!」
「おいおい、相手が腹の中で何考えてるかミエミエじゃないか!」
性格破綻者とも言える主人公だけれど、その純粋さゆえに同情が沸き、思わずこういう言葉も出てしまう。

結末は、何通りにでも解釈できるようになっている。
解説に書かれていたのも、ひとつの解釈ではありますが、個人的にはそっちは取りませんねぇ。「女はしたたか」、そっちのほうがありえると思ふ。。。

ナボコフの名で、つい享楽的本読みの自分などは引いてしまうのですが、これは文学としてだけではなく、倒叙もののミステリとしても一級品なのじゃなかろうか?可能ならば妻側の視点から書かれたこの物語を読みたい。多分、いや確実に、これに負けず劣らず面白い小説になるだろうな。
 
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