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半七捕物帳 

岡本綺堂/著 春陽文庫

昨年池波正太郎の固め読みをしましたが、あの雰囲気が忘れられなくなってしまい、今度は大正文学「半七捕物帖」へ。
明治の世、引退して悠々自適の生活を送っている半七老人のもとへ通った『私』が聞き書きをした…という設定になっています。

「鷹のゆくえ」はちとご都合主義じゃ?とも思えますが、面白いからいいや(笑)。「津の国屋」は幽霊譚が実は…という内容で、この巻の収録作品では一番好き。特に最後の半七の台詞「昔の悪党は今の善人より馬鹿正直」が最高です。江戸情緒と明治の雰囲気が同居する設定も良いなぁ。

収録作品
お文の魂/石灯籠/鷹のゆくえ/津の国屋/湯屋の二階/お化け師匠/広重と河獺/三河万歳/海坊主/化け銀杏

半七捕物帳 (2)

雷獣一つ目小僧に化け猫鬼娘と、あやし系の物語が目立つ巻。明快に解決できた事件だけじゃなく、ところどころに常識では解き明かせない謎も残っちゃうところが雰囲気を高めています。特に「弁天娘」…深読みするとあまりに哀れ。
それと「雪達磨」の南京玉の使い道にはちとびっくりしました。これってガラス製だと思ってたのだけど、調べたら陶製もあるのね。

「南京玉ー陶製やガラス製の小さい玉。糸を通す穴があり、指輪や首飾り、刺繍(ししゆう)の材料などにする。ビーズ。」

だそうな。ビー玉様のものを思い浮かべてたから違和感あったんだな…江戸も明治も遠くなりにけり。

収録作品
弁天娘/山祝いの夜/冬の金魚/雷獣と蛇/一つ目小僧/勘平の死/雪達磨/鬼娘/槍突き/猫騒動/春の雪解/むらさき鯉/半鐘の怪
半七捕物帳〈3〉
維新前の混乱と仇討ちが同居する時代ならではのラインナップ。庶民にとっても怒涛の数年間だったのだろうなあ。「あま酒売り」は、似たような物語をハミルトンの「眠れる人の島」で読んだばかり。こういう伝説って洋の東西を問わずあるものなのですね。「小女郎狐」のけなげさ、そして「奥女中」の哀れさと優しさが心に残りました。

収録作品
旅絵師/女行者/朝顔屋敷/帯取の池/異人の首/奥女中/あま酒売/半七先生/蝶合戦/筆屋の娘/人形使い/小女郎狐

半七捕物帳〈4〉

「三つの声」は、筋立ては元よりテンポも良くて、舞台で演じたら面白いだろう一編。「柳原堤の女」は…第一巻の「三河万歳」でも感じたのだけれど、この時代の、何らかの異常を持って生まれた人間に対する偏見って凄かったようです。これって鎖国の弊害かもね、殆どの人間が一生同じ人種、同じ考え方の人間しか知らずに暮らしていたのだから。
いえ、現代でもまだこういう考え方から抜け切れない人って居ますけれど…でも、偏見を持った人が存在する背景を考えることによって、それを無くす社会への道が見えてくるのではないだろうか。遮二無二「差別用語はいけない」とか言って言語統制を布くのは、偏見をただ深いところに押し込めるだけじゃないのかな…いえ、勿論規制が悪いとは思いません必要性は認識してますが。うーん難しいっ。

収録作品
狐と僧/松茸/仮面/柳原堤の女/張子の虎/お照の父/向島の寮/三つの声/少年少女の死/熊の死骸/十五夜御用心/金の蝋燭
半七捕物帳(5)

この巻は文明開化の香りでした。南蛮渡来のズウフラ(拡声器?)に唐人飴、そして種痘。
「河豚太鼓」の種痘をすると牛になるっていう噂…いえ、当時の人にとっては冗談では済まなかったんでしょうね。こういう思い込みが生んだ悲劇って結構あったんだろうなと思います。そして「妖狐伝」では、異人が次第に江戸市中に入り込んで来た様子が。と言っても時はお江戸の爛熟期でもあり、「正雪の絵馬」ではコレクター心理、「大坂屋花鳥」では天保の改革が扱われていたり。新旧が混在する激動の時代と、それでもいつの世も変わらぬ庶民の生活が描かれた巻でした。

収録作品
ズウフラ怪談/大阪屋花鳥/正雪の絵馬/大森の鶏/妖狐伝/新カチカチ山/唐人飴/河豚太鼓
半七捕物帳〈6〉

吉良の遺品、お化け屋敷に菊人形と来たかと思うと、写真好きの異人が登場したり…この巻も、幕末の香りが漂います。菊人形って幕末にやっと出てきた、比較的歴史の浅いものだったのね、知らなかった。
いつも感じるのだけど、芝居好きの半七老人の語る、楽しげな薀蓄を理解できないのが悲しい。十手持ちだった若き日の姿も良いけれど、やはり飄々とした好々爺の半七が最高です。

収録作品
かむろ蛇/幽霊の観世物/菊人形の昔/蟹のお角/青山の仇討/吉良の脇差/歩兵の髪切り/川越次郎兵衛
7巻
十手持ちの半七が牢抜け者と間違われる、とぼけた味わいの「廻り燈籠」、盗難事件だけど読後感がほのぼの「夜叉神堂」。いいですねえこういうの。そして最後の中篇「白蝶怪」は、入り組んだ筋立てで、長編にしても良さそう。

収録作品
廻り灯籠/夜叉神堂/地蔵は踊る/薄雲の碁盤/二人女房/白蝶怪



明治の世、隠居している元岡っ引きの半七親分が語る思い出話の数々。幕末の江戸情緒、そして華やかな明治の東京を満喫させてくれた作品でした。
著者の岡本綺堂は明治5年の生まれ。日々目まぐるしく変わり、どんどんと成長していく文明開化の東京で育ち、周囲の大人から、お江戸の昔話をたんと聞かされて育ったのでしょうね。会話の端はしに、今では使われない言い回しや江戸言葉が出てくるし、既に死語になり、辞書で調べてやっと納得するような言葉が当たり前のように話されている。いえ、勿論このシリーズの一番の魅力は、老いてなお粋な江戸っ子半七親分そのものなのだけれど。
 
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