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孤宿の人 

宮部みゆき/著 新人物往来社

江戸の生まれながら、四国の讃岐国丸海藩に連れてこられ、たった10歳でひとりその異郷に放り出されたほう。厄介者として生まれたため躾けも受けられず、智恵も回らない彼女を、丸海藩の人々は暖かく迎え入れる。
が、この地に江戸から乱心した元・勘定奉行加賀殿が流され、ほうの運命はさらに変転することになる…

妻子を毒殺した上、部下を惨殺した加賀殿は、鬼、魔物と呼ばわれ、信心深い将軍によって遠く四国の地に流されてきます。将軍家からの預かり者として、不浄の噂のある館に幽閉され、厳重に監視される加賀殿の噂は町中に流れ、次第に人の心の中の悪鬼を引き出してしまいます。

人殺しは不問にされ、加賀殿の幽閉されている屋敷に『肝試し』に入り込んだ頑是無い子供は切り捨てられる。幕府の不評を買うまいと戦々恐々とする武士たちと、鬼が来たために雷が落ち、神社が消失したと恐れおののく庶民。毎年の夏病みさえも悪鬼の仕業である疫病とされ、次第に恐れと苛立ちを募らせる人々と、それを利用し私欲に走る人間。

最近の宮部作品には無かった、人間性の恐ろしさと危うさを書いた作品です。登場人物ひとりひとりの心情が丁寧に描写され、久々に読み応えを感じました。魔物も悪鬼も、そして御仏もひとりの人間の中に存在するもの。ほうは、その純真さゆえに、他人の心の中の御仏を引き出す存在として描かれています。

宮部氏は、「キングのような作品を書きたい」と小説家を志したそうですが、ここに来て念願成就といった感じ。市井の人々の日常を書きつつ、鬼・加賀殿の人物像と、彼を巡る幕府と丸海藩の思惑を次第に明らかにし、それと平行して、登場人物ひとりひとりの中の鬼と仏をあぶりだしていく。雰囲気としては初期の江戸ものの短編に近いです…ま、最後はあまりにキングっぽくてかえって醒める部分もありますが。でも個人的には一番好きな書き方。ユーモアを中心にした作品も悪くないけれど、やはり宮部みゆきはこうでなくちゃ!最近は図書館で借りるだけだった彼女の作品ですが、これは文庫になったら即買いです。


孤宿の人 上 孤宿の人 上
宮部 みゆき (2005/06/21)
新人物往来社
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