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ヴィーナス・プラスX 

シオドア・スタージョン/著 大久保譲/訳 国書刊行会

ごく当たり前の生活を送っていた27歳のチャーリー・ジョンズは、ある日突然謎の世界“レダム”で目を覚ます。言葉も生活習慣も全く違う異形のレダム人たちは彼に、「あなたに私たちの文化を評価して貰いたい」と告げる。

「元居た世界に送り返す」との言葉を信じ、彼らの導くままにこの世界を見て歩くチャーリー。両性具有であり、たった一つの文化の中で暮らすレダム人には、偏見も差別もありません。「罰」の概念すら存在しないこの世界。しかもエネルギー問題は解決済みであり生活水準は非常に高い。それでも農業と手工業を守り、地に足の着いた生活をしている彼らを見ると、ここは完璧なユートピアと思えます。

この作品の発表された1960年は、東西の冷戦がピークを向かえ、女性蔑視や人種差別がやっと問題視されるようになった時期です。その頃に読めばかなりショッキングな内容だったでしょう…せめて冷戦終結前に読みたかったなあ。
それでも性差別が根強く残る地域は多いし、宗教や文化的差異に起因する数々の問題点は今の世でも殆ど解決されていないし、その点を考えるとやはりここは理想の世界かも。

物語の最後に明かされる真実も、この時代のSFを読みなれてしまっていると意外性は薄いかな?でも、そこへ至るまでの伏線の巧妙さには脱帽です。また、セダムの話と現代アメリカ(1950年代の)の生活が交互に語られる構成は、発表から40数年後にやっと読めた身にはとても有難いですね。当時の人々のものの考え方を再認識した上で読むのと、現代の感覚で読むのとではかなり違う印象が残ってしまうでしょうし。…勿論スタージョンがそこまで予測していたわけではないでしょうけど(笑)。

これまで発売された長編のような峻烈さは薄く、また時代背景が大きな意味を持っているため、普遍的という意味でも違ってくるかも…。
でも、この時代のSFをこよなく愛する身としては、久々に良い作品を読んだ!という満足感は充分に得られました。

そうそう、忘れてはいけないのが最後のほうに出てくる「フィロスの論文」。ここにはスタージョンの作品全体に共通するテーマが書かれています。愛、そして全てのものを取り去った後に残る人間の本質。これを念頭において、また他の作品を読み返してみようっと。

ヴィーナス・プラスX ヴィーナス・プラスX
シオドア スタージョン (2005/05)
国書刊行会
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