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運転席 

ミュリエル・スパーク/著 深町真理子/訳 早川書房

些細な一言でヒステリックに噛み付く、エキセントリックな30代半ばの独身女性リズ。彼女が休暇を過ごす為に買い求めた衣服はレモン・イエローの上半身、スカートはオレンジ、紫、ブルーに染め分けられており、上に羽織るのは赤白縞模様のサマーコート…鮮やかなんてものじゃない、派手という言葉ですら弱すぎる。しかも丈は10年も流行遅れという野暮ったさ。
勿論彼女はあちこちでトラブルを起こすのですが、そんなことは全く気にかけず、彼女はひたすら顔も姿も年齢すら分からぬ「彼」を探すのです。当たり前の女性なら探すのは一夜のアバンチュールの相手か、生涯の伴侶なのでしょうが、リズの言動を見ていると、そんなありきたりの相手とも思えません。彼女がこの後どうなるかは最初から明かされているのですが、何故そうなるのかは最後まで分からない。いえ、読みながら「何故?」などと疑問を持つ暇はありません。ただただ惹きつけられ、活字を追うだけで精一杯。
この小説のエピソードのひとつひとつは、ものの見事にラストにて結集します。クリスティー女史のお言葉を拝借すれば、全ては「ゼロ時間」ただ一点へ向かってまっしぐらに突き進むのです。そして、読後の重苦しさの中に、不思議な達成感すら感じます。この感覚はなかなか得られるものじゃありません。

しかし、この著者の作品は現在殆どが絶版であります。しかも、古書の世界では恐ろしい高値がついているのです。一作読めば、この作者がメジャーにならなかったのも、絶版久しい本だと言うのに今だ大枚はたいて求める人が絶えぬのも納得がいくのですが…何処かの古書店に私の買えるような値段で置いてはいないものでしょうか。薄っぺらな財布を眺めながら、ただ溜息をつくしかありません。この本をおすすめ下さったおはなさん、本当にありがとうございました。また貧乏街道を驀進することになっても後悔致しませぬ。

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