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その名にちなんで 

ジュンパ・ラヒリ/著 小川高義/訳 新潮社クレストブックス

カルカッタ在住のベンガル人アシマは、見合い結婚してすぐに夫アシュケと共にアメリカへ移住する。
異国で生まれた長男に、アシュケは生涯の転機となった事故で自分の命を救った本の作家にちなみ「ゴーゴリ」と名づけるが、ゴーゴリは成長と共に自分の名を恥じるようになり、その後大学入学を切っ掛けに改名に踏み切り「ニキル」と名乗る。生まれ変わった彼は戸惑いつつも新しい生活に飛び込んでいくが…

ベンガルの風習を守り続け、アメリカでもベンガル人社会の中のみで生きようとする両親と、生まれ育ったアメリカ社会に溶け込もうとする子供たち。しかし、アメリカ文化の中でのみ育ったアメリカ人と同じにはなりきれないゴーゴリの生き方が、名前と女性遍歴とで著される。
うまい!としか言いようのないエピソードの積み重ねが素晴らしい。もう絶賛である。読後には男物の靴を履いてみるアシマ、インドでアメリカンボップスのテープを奪い合う兄弟、ニューハンプシャーで自然に溶け込んだ生活をおくるラトクリフ一家の映像がしっかり頭に刻みつけられていた。この完璧な小宇宙を作り上げたのが、まだ30代の女性というのだから嬉しい驚きである。珠玉の短編集「停電の夜に」で酔わせてくれたかと思うと今度はこの長編…読書好きで良かった!

この先ネタバレ領域です、ご注意を。

 


あとがきで「ほとんど憎まれ役」と書かれていたモウシュミの存在が際立っていたと思う。同じような環境に育ち、同じようにそれらを拒否しながらも、最後は両親の生きかたを理解し引き継いでいこうとするゴーゴリと、それを自分から破壊してしまうモウシュミ。彼女はベンガル社会で生きていくことに耐えられず、しかし芯からアメリカに溶け込むことも出来ない…唯一両方から遠く離れたパリでの生活のみが本当の人生であったような彼女があまりにも痛ましい。これは両親の育て方の差と言えるのだろうが、本人が気づいていないのが一番の悲劇なのかも…。
そして静かで目立たないが、両親が少しづつ、そして着実にアメリカ社会に根を下ろしていく様子が心に残る。アシマの生き方は、一見女性としての宿命に流されているように見えながら、実は一番したたかなのかも知れない…勿論礼賛の意味で。

あれこれとだらだら書き連ねてしまいましたが、言いたいのはひとことだけ…最高です!


その名にちなんで その名にちなんで
ジュンパ・ラヒリ (2004/07/31)
新潮社
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