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比類なきジーヴス 

P・G・ウッドハウス/著 森村たまき/訳 国書刊行会

『大抵の人は執事にはズボンの折り目をつけさせるだけで、家事全般を取り仕切らせることはない。しかしジーヴスは違うのだ。うちにきた最初の日から、僕は彼を一種の先導者、哲学者、そして友人と見なしている。』

もう期待を上回る面白さでした。買うのを躊躇していた時間の勿体無かったことっ。
序盤のこのバーティーの台詞どおり、ジーヴスは何をやらせても完璧。バーティーがどんなトラブルに巻き込まれても、ジーヴスは慌てず騒がず冷静に、そして簡単に解決してしまいます。英国特産(笑)、恐るべき叔母さんにだって負けやしない!
数ある英国小説の中でも、この“叔母さん族”に勝てる人物は珍しいかも。

使用人の立場ながらも天下一品の頭脳は、一瞬『黒後家蜘蛛の会』のヘンリーを思い出させますが、ジーヴスが彼と決定的に違うのが「利に敏い」ところ。主人のために解決しているのは間違いないのですが、その途中で何時の間にかちゃっかり利益を得ています。それが、主人の気にいらない靴下を処分するためだけであっても(笑)。その人間味がまた良いです。

主人のバーティーだって単に金持ちなだけじゃなく、古典だってすらすら暗誦しちゃう知識人なのですが…やることなすことどう見てもおマヌケ(笑)。
まあ、現代だから彼の博識に感服するのであって、この時代には当たり前の紳士のたしなみだったのでしょうねえ。

本書はウッドハウスコレクション・全3冊の第一巻です。6月には「よしきた、ジーヴス」その後「それゆけ、ジーヴス」が刊行予定。はっ、早く読みたい~。
兎にも角にも、英国文学、少々毒の効いたユーモア小説がお好みならば是非どうぞ!

比類なきジーヴス 比類なきジーヴス
P.G. ウッドハウス (2005/02)
国書刊行会
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ヴィーナス・プラスX 

シオドア・スタージョン/著 大久保譲/訳 国書刊行会

ごく当たり前の生活を送っていた27歳のチャーリー・ジョンズは、ある日突然謎の世界“レダム”で目を覚ます。言葉も生活習慣も全く違う異形のレダム人たちは彼に、「あなたに私たちの文化を評価して貰いたい」と告げる。

「元居た世界に送り返す」との言葉を信じ、彼らの導くままにこの世界を見て歩くチャーリー。両性具有であり、たった一つの文化の中で暮らすレダム人には、偏見も差別もありません。「罰」の概念すら存在しないこの世界。しかもエネルギー問題は解決済みであり生活水準は非常に高い。それでも農業と手工業を守り、地に足の着いた生活をしている彼らを見ると、ここは完璧なユートピアと思えます。

この作品の発表された1960年は、東西の冷戦がピークを向かえ、女性蔑視や人種差別がやっと問題視されるようになった時期です。その頃に読めばかなりショッキングな内容だったでしょう…せめて冷戦終結前に読みたかったなあ。
それでも性差別が根強く残る地域は多いし、宗教や文化的差異に起因する数々の問題点は今の世でも殆ど解決されていないし、その点を考えるとやはりここは理想の世界かも。

物語の最後に明かされる真実も、この時代のSFを読みなれてしまっていると意外性は薄いかな?でも、そこへ至るまでの伏線の巧妙さには脱帽です。また、セダムの話と現代アメリカ(1950年代の)の生活が交互に語られる構成は、発表から40数年後にやっと読めた身にはとても有難いですね。当時の人々のものの考え方を再認識した上で読むのと、現代の感覚で読むのとではかなり違う印象が残ってしまうでしょうし。…勿論スタージョンがそこまで予測していたわけではないでしょうけど(笑)。

これまで発売された長編のような峻烈さは薄く、また時代背景が大きな意味を持っているため、普遍的という意味でも違ってくるかも…。
でも、この時代のSFをこよなく愛する身としては、久々に良い作品を読んだ!という満足感は充分に得られました。

そうそう、忘れてはいけないのが最後のほうに出てくる「フィロスの論文」。ここにはスタージョンの作品全体に共通するテーマが書かれています。愛、そして全てのものを取り去った後に残る人間の本質。これを念頭において、また他の作品を読み返してみようっと。

ヴィーナス・プラスX ヴィーナス・プラスX
シオドア スタージョン (2005/05)
国書刊行会
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タフの方舟 1・禍つ星 

ジョージ・R・R・マーティン/著 酒井昭伸/訳 ハヤカワSF文庫

惑星フロ・ブラナを巡り、周期的に疫病を流行らせる「禍つ星」。それは、1千年前に滅びたEECの遺産である、巨大な生物戦争胚種船だった…。


おんぼろ船で宇宙を旅していたタフは、この船をサルベージに来た一行に雇われるのですが、膨大な宝の山とも言うべき胚種船の争奪戦に巻き込まれてしまいます。

胚種船と言うだけあって、禍々しい生き物は次々出てくるのですが…帯にある「ジュラシック・パークの興奮」ってのはちょっと違うかな?いえ、コンピー軍団みたいな「子猫ちゃん」や恐竜さん、他にもいろいろ恐ろしげな生き物が乗船しておりますが(大丈夫、胚の状態です…大抵は)、彼らに対する主人公の対処の仕方がまるっきり違う。

巨体を揺すり、猫を抱き、銃を向けられても恐竜に襲われようとも、常に慇懃無礼な態度を崩さない主人公タフの姿には思わず苦笑。姿かたちはどっから見ても悪役、利に敏く時に冷徹、でも猫だけは溺愛してるという一筋縄では行かないタフですが、読み進むうちに妙に可愛く思えてくるのです。

この作品は数年に渡って書かれた連作短編であり、今月発売の「2・天の果実」とでワンセット。この巻には書き下ろしのプロローグの他「禍つ星」「パンと魚」「守護者」の3篇が収められています。
しかし、この非常に魅力的なシリーズが7編しか書かれていないとはこれ如何に。出来ればもっともっと書き続けて欲しいものであります。

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF
ジョージ・R.R. マーティン (2005/04/21)
早川書房
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ねじの回転 

ヘンリー・ジェイムズ/著 南條竹則・他/訳 創元推理文庫

有名な古典ホラーですが、今まで機会がなく未読だったので、今回の新訳を機に購入しました。

ここに出てくる超常現象は、実は全くと言っていいほど怖くありません。それを期待して読んだら肩透かしでしょう。でも怖さは感じましたよ、全然別の意味で。

この小説に出てくる主人公の家庭教師ですが、彼女はヴィクトリア朝の道徳観念に凝り固まっています。貞節を守り、身分をわきまえ、ひたすら「正しく」生きることを他人にも強く求める、常に自分が正しいことを信じて疑わない牧師の娘。

彼女の性格を辿っていくうちに、もしかすると全ては彼女の妄想なのでは?との疑念が兆してきました。彼女と前任の家庭教師だったジェスルは一人の人間の裏と表ではないのか?そして、自分の中でつじつまを合わせる為のみに、あの悲劇が起きたのかも…。
ま、深読みはコレ位にして(笑)。
個人的に古い時代の話は好みなのですが、ここまで当時の道徳観念を押し出されると、感情移入して読むのは無理でありました…。

ねじの回転 -心霊小説傑作選- ねじの回転 -心霊小説傑作選-
ヘンリー・ジェイムズ (2005/04/09)
東京創元社
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仮面の真実 

バリー・アンズワース/著 磯部和子/訳 創土社

14世紀後半のイングランド。退屈な筆記仕事に嫌気がさしていた神学生のニコラスは、初夏の美しさに誘われ出奔してしまい無一文で放浪していたが、ふとしたことで旅芸人の一座と知り合い、役者として行動を共にすることになる。

その後、旅の途中に立ち寄った街で素寒貧になった彼らは、客を呼ぶ為に通常演じている道徳劇(聖書から題材をとったもの)ではなく、この地で起きたばかりの殺人事件を元に創作劇を演じることにするですが、この演劇が凄いです。最初は、事件後すぐに捕まった女性の犯行だと疑いもせず、彼女が如何にして殺人を犯したか?の劇だった筈なのですが、その後皆で聞き込みを重ね証言を検証していくうちに、事件の裏に隠されたものの存在に気づいていきます。与えられた役を演じることによって矛盾点が明らかになり、上演中に即興で筋立てを変え、次第に真実に近づいていく様子は臨場感に溢れ、時代背景とあいまって、独特の雰囲気を醸し出しています。

長編にしては短めではありますが、しっかりと書き込まれた時代背景や人物描写の巧さで、読後は非常に満足満足。謎解きはちょい簡単すぎたけれど、推理に重点を置いた小説ではないのでまあ良いでしょう。

著者はブッカー賞も受賞しており、英語圏ではかなり知名度がたかいようなのですが、邦訳はこれが初めてだそうです。でもこの面白さ、未訳のままにしておくなんて勿体無い!出来れば全作品を読みたい!…すっかりミーハー的ファンと化しております(笑)。でも面白かったんですよ~ホント。

仮面の真実 仮面の真実
バリー アンズワース (2005/01)
創土社
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文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! 

ジャスパー・フォード/著 田村源二/訳 ソニーマガジンズ

これは平行宇宙?舞台は1985年のイギリス、クリミア戦争は131年目に入り、泥沼化しています。なんと敵は帝政ロシア!
違うのはそれだけじゃなく、政治や警察機構も全く異質。そしてこの世界の娯楽の中心は文芸小説で、人皆すべからく本の虫なのです。いえ、人間じゃない正真正銘の「本の虫」まで出てきますよ(笑)。街角にはシェークスピアを暗誦する自動人形があるし、ディケンズやブロンテ姉妹の生家には観光客が押し寄せる。活字中毒者には夢のような世界であります。

この作品は、主人公で文学刑事のサーズデイが史上最悪の犯罪者ヘイディーズを追いかけるという、正統派警察小説になっているのですが、このヘイディーズが凄い。防犯カメラには写らないし、変装ならぬ超能力(らしきもの)で自分の姿を老女に見せるなんて朝飯前、ついでに銃で撃たれたって平気の平左。この史上最強の凶悪犯を如何にして取り押さえるのか?

ほら吹きを得意とする作家は多いけど、その誰にもひけをとりませんこの作者。

そうそう。この作品はかの古典「ジェイン・エア」を中心に展開するのですが、私はこれを14歳の時に(注:何年前かは聞かないように)読んだきりなのです。今覚えているのは切れ切れのエピソードと結末のみ。でも、ここに出てくる話はどうも覚えている内容と違っている…結末なんて全く記憶と違うし。まあ、最後まで読めば納得するのですが。お陰で中盤では自分の記憶に疑いを抱いてしまったぞ。本気で自分の脳が縮小したかと焦りましたわい(笑)。

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! 文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ!
ジャスパー フォード (2005/09)
ソニーマガジンズ
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ホミニッド-原人 

ロバート・J・ソウヤー/著 内田昌之/訳 ハヤカワSF文庫

ネアンデルタール人が支配種族となった世界から、実験中の事故により平行宇宙に転送させられた物理学者ポンター。その世界は、人口が多すぎ、自然が破壊された、クロマニヨン人が支配する世界だった。

この作品も、クロマニヨン人の文化とネアンデルタール人の文化を対比させ、ネアンデルタールの世界では消えうせた(ように見える)ポンターを殺害した容疑で共同研究者が裁判にかけられ、こっちの宇宙では暴行の被害に遭った女性の男性不信を絡め…と、相変わらずのサービス精神。でも、3部作の第一部であるせいか、説明が多く中身は薄いように感じます。それを補うのが、詳細に書き込まれたネアンデルタール社会。こちらから見ると、犯罪の撲滅に成功したパラダイスにも見えますが、徹底した管理社会であるがゆえの歪みも見受けられ、この作品の読みどころともなっています。脳味噌が軽く低脳で、しかも好戦的なクロマニヨン人。重い脳を持ち宗教を持たず、原罪や恥などという考え方に縛られることなく、管理に甘んじるネアンデルタール人。この両者の交流が、これからどちらの方向に向かうのか。ポンターと人間の関係はどのように変化して行くのか。それは続刊を待つしかないのですが…。少なくても今回は、3部作全てが刊行予定となっていますので一安心。『アフサン』で待ちぼうけを食わされた身としては、予定変更にならないことを祈るだけでありますなあ。しかし…副題の「原人」というのが分からない。進化の分岐点より数万年、平行世界のネアンデルタール人だってしっかり支配種族なのですけれど…。

ホミニッド-原人 ホミニッド-原人
ロバート・J. ソウヤー (2005/02)
早川書房
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殺人展示室 

P・D・ジェイムズ/著 青木久恵/訳 ハヤカワポケットミステリ

 第一次大戦と第二次大戦に挟まれた数十年間をテーマにしたデュペイン博物館。貴重な初版本や絵画も展示されているが、人々の興味が集まるのは、この時代の有名な犯罪を扱った「殺人展示室」だった。その博物館で実際に殺人事件が起こる。しかも、事件の状況や、その場から逃げ出すように去った青年の残した言葉が、展示の中の有名な事件に奇妙なくらい酷似していたのだ… 前作はあまり好みではなかったのですが、今回はしっかり面白かったです。相変わらず起伏に乏しい展開ではあるものの、お得意の人物設定、性格描写が特に生きているように思いました。タリーとライアンのぎくしゃくした交流での、エゴイズムとキリスト教的博愛精神のせめぎ合いなんて、やはりこの人ならではですね。このあたりの描写や、ミス・ゴドビーの過去の描き方は流石に巧い。第二の殺人には少々安易な感じも受けましたが、一人ひとりの性格を細かに描写した上で展開する物語はやはり読み応えがあります。でも。でもですよ。個人的にはコーデリア・グレイの心を捉えた「孤高の詩人」ダルグリッシュ警視長よ永遠に!なのでありますが…次回作で彼はどうなってしまうのでしょう?余りに急激な変化の予感。何か読むのが恐いような気もします…でも気になるっ。

殺人展示室 殺人展示室
P.D. ジェイムズ (2005/02)
早川書房
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邪魔をしないで 

ミュリエル・スパーク/著 深町真理子/訳 早川書房

ひたすらに「その時」を待ち続ける使用人たち。彼らは既に、記者に与える談話を考え、回想録まで練っています。他の名家からも引く手あまたの有能な彼らですが、彼らの才能はこのような場合でも遺憾なく発揮されているようです。次々に訪れる邪魔者を排除しつつ「その時」に備えて、深夜着々と準備をしている彼らの姿は外の嵐とあいまって、恐ろしさと同時に紛れもない滑稽味をも湛えています。
古典的な演劇手法『場の一致 時の一致 筋の一致』に則り、ブラックユーモアに溢れたこの小説を読んでいると、まるで舞台劇を見ているかのように登場人物たちの動きや表情が浮かんできます。そして伏線の巧妙さはさすがスパーク。
この作品、舞台化はされていないのかな?是非是非観たい、出来れば執事はサー・ジョン・ギールグッドで…って無理か(笑)。

シンポジウム 

同棲中の画家と未亡人が、友人を集めて開いたちょっとしたパーティー。話題の中心は、ある富豪女性の一人息子の結婚相手について。まあ、ごく普通の親睦会です。しかしここに集う人々は、普通のようでいて、なんか半歩ずれている人ばかり…留守中に泥棒の被害に遭い「これは強姦だ!暴行だ!」と騒ぎ立てる男。彼にうんざりしている妻は、夫の悪口を先妻の娘に書き送り、お年頃の青年はぬいぐるみを抱いて寝る。

この本に出てくる人物の中で、実際に異常者の烙印をおされているのは、病院を出たり入ったりしているマグナスひとりだけですが…
このマグナスのかき方がなんとも凄い。「実際に罪を犯した奴は後ろめたくは思わないもんだ。有頂天になり、勝ち誇り、自分を大したもんだと思うさ」との台詞を吐く下りなんて、彼の爛々と光る瞳を現実に覗き込んでしまったような錯覚さえ覚えます。

ストーリーは富豪の息子(ぬいぐるみ青年)を射落としたマーガレットを巡って静かに淡々と進んでいくのですが、なにげなく記された言葉に隠された伏線、一人ひとりの性格描写の緻密さはもう職人芸と言えるかも。
しかしここに集う面々には、プラトンの「饗宴」の方々もびっくりでしょうなあ…。

運転席 

ミュリエル・スパーク/著 深町真理子/訳 早川書房

些細な一言でヒステリックに噛み付く、エキセントリックな30代半ばの独身女性リズ。彼女が休暇を過ごす為に買い求めた衣服はレモン・イエローの上半身、スカートはオレンジ、紫、ブルーに染め分けられており、上に羽織るのは赤白縞模様のサマーコート…鮮やかなんてものじゃない、派手という言葉ですら弱すぎる。しかも丈は10年も流行遅れという野暮ったさ。
勿論彼女はあちこちでトラブルを起こすのですが、そんなことは全く気にかけず、彼女はひたすら顔も姿も年齢すら分からぬ「彼」を探すのです。当たり前の女性なら探すのは一夜のアバンチュールの相手か、生涯の伴侶なのでしょうが、リズの言動を見ていると、そんなありきたりの相手とも思えません。彼女がこの後どうなるかは最初から明かされているのですが、何故そうなるのかは最後まで分からない。いえ、読みながら「何故?」などと疑問を持つ暇はありません。ただただ惹きつけられ、活字を追うだけで精一杯。
この小説のエピソードのひとつひとつは、ものの見事にラストにて結集します。クリスティー女史のお言葉を拝借すれば、全ては「ゼロ時間」ただ一点へ向かってまっしぐらに突き進むのです。そして、読後の重苦しさの中に、不思議な達成感すら感じます。この感覚はなかなか得られるものじゃありません。

しかし、この著者の作品は現在殆どが絶版であります。しかも、古書の世界では恐ろしい高値がついているのです。一作読めば、この作者がメジャーにならなかったのも、絶版久しい本だと言うのに今だ大枚はたいて求める人が絶えぬのも納得がいくのですが…何処かの古書店に私の買えるような値段で置いてはいないものでしょうか。薄っぺらな財布を眺めながら、ただ溜息をつくしかありません。この本をおすすめ下さったおはなさん、本当にありがとうございました。また貧乏街道を驀進することになっても後悔致しませぬ。

願い星、叶い星 

アルフレッド・ベスター/著 中村融/訳 河出書房

この本、だいぶ前に買ったのですが、ついつい寝かせてしまった…実は、他の皆様の好評に釣られて購入したものの、この著者の唯一の既読作「虎よ!虎よ!」がイマイチ好みじゃなかったのです。でもそれは全くの杞憂でした、面白かった~。
「願い星、叶い星」
これは既読でした、しかも収録されたアンソロジーの中でもお気に入りだった短編。これがベスターだったとはっ。冒頭の「作文」から、失踪に纏わる謎、そしてラスト。一気に読ませて、いつまでも忘れられない一編です。
「ごきげん目盛り」
冒頭から血なまぐさくちょっと引いてしまいましたが、これも読み応えのある短編。「わたし」が彼であるのかアレであるのか、この描き方は余人の追及を許しますまい。
「昔を今になすよしもがな」
うーん、日本人の心をくすぐるこのタイトル。これは翻訳者のお手柄ですな。つい「しずやしず~~」と詠いたくなってしまいますが。書き尽くされた感のあるこのテーマ、でも切り口の斬新さが心捉えます。
他の短編も、古いSF好きの心を掴む秀作。今読んでも古びません。「イヴのいないアダム」は、この小説の後に同様の話がかなり書かれてしまったのでショック度が薄れてしまったでしょうが…。
ともあれ、ベスターの長編は好みに合わなくても、短編はとっても好みです。
しかしこの“河出書房 奇想コレクション”って、いい作品ばかりが揃っているような…文庫化は望めないだろうし、思い切って全巻揃えるしかないかなあ。そうそう、スタージョンの「輝く断片」もこのシリーズに入るのですよね…待ち遠しいったら。

収録作品
ごきげん目盛り/ジェットコースター/願い星、叶い星/イヴのいないアダム/選り好みなし/昔を今になすよしもがな/時と三番街と/地獄は永遠に

願い星、叶い星 願い星、叶い星
アルフレッド・ベスター (2004/10/22)
河出書房新社
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継母礼賛 

マリオ・バルガス・リョサ/著 西村英一郎/訳 福武書店

冒頭は、40の誕生日を迎えた継母に心憎いプレゼントを贈る少年という、ほのぼのとした雰囲気である。再婚するにあたってルクレシアは、なさぬ仲の息子の存在を一番心配していたのだが、少年はこの美しい継母を心底崇拝しているようだ。でも、母に甘える息子の“おやすみなさいの接吻”がちょっとヘン…?

麗しの継母ルクレシアと天使のような少年アルフォンソ、そして自らの身体を変質的な喜びを持って磨き上げる夫リゴベルト。この3人の姿を、「リディア王カンダウレス」「水浴の後のディアナ」等の絵画と寓話にて描き出していくリョサの筆致は、官能に溢れながらも冷徹であり、ラストではそれまで浮かべていた笑みが一瞬にして凍りついてしまう。そして、女神を賛美する文章でも、他言を憚るほどに詳細を極めた肉体の描写でも、遥かな異世界に引き込まれたかのような言葉の巧さが本書でも光ります。
帯を見ると結構キツそう、中身を見るともっとショッキングという買うには躊躇してしまう本ですが、見つけて良かった買って良かった。一年の締めくくりの1冊としては大満足、強烈に心に焼きつく本でありました。
そうそう、この本には続編があるのですよね。「継母」は絶版だけれど、こちらは入手可能。実は既にネット書店のカートに鎮座しております♪

追記

続編「官能の夢」は中年男性の白昼夢でありました…

無理して読まなくても、といった内容。


古書修復の愉しみ 

アニー・トレメル・ウィルコックス/著 市川恵里/訳 白水社

大学院に在籍しながら印刷業に携わっていた著者は、大学の製本講座で修復家のアンソニー氏と出会い、彼に弟子入りすることになる。
この修復作業が実に細かい。数百年前のばらばらになりかけた本を一旦ばらし、ページに洗いをかけ、破れをつくろって、外見を元のように美しく再現するだけではなく、また読むことができるように作り直すのだ。正に気の遠くなるような作業の連続。そして一流の技術者達の、自分の得た技術を後世に残す為の努力にも感服である。

「弟子入り」ってなんか懐かしい日本語だが、著者は日本の職人に造詣が深く、師弟制度についても詳しい。英語の「クラフツマン」「アルティザン」では伝えきれない“職人気質”を理解し共感してくれているのは嬉しい限りである。仕事に使う道具も日本のものが頻繁に出てきて、やはり昔からこの国は技術立国だったんだ…としみじみ思った。今でも日本の技術を支えているのは、町工場の職人さんの、経験に裏打ちされた高度で精密な技術だものなあ。

この本には派手な面白さはないが、修復技術やその歴史、図書館の奇観本保存の現状など、本好きの一人として非常に読み応えを感じた。仕事としても、やりがいのある面白い職業だろう。自分の不器用さと飽きっぽさを自覚している身としては見果てぬ夢でしかないけれど。

本書を読了してすぐに、書棚の蔵書をチェックした。大部分が花ぎれ(背の中に貼り付ける、芯の入った布)がなかったり、あっても紙製だったりと、やはりいまどきの大量生産品だったが、一冊だけ飛びぬけてしっかりした作りの本があった。山尾悠子著「ラピスラズリ」である。この本は値段が高かったので一度図書館で借りたのだが、後に内容と装丁の美しさに所有欲が抑えられず購入したもの。値段に負けずに買って良かった~。

古書修復の愉しみ 古書修復の愉しみ
アニー・トレメル ウィルコックス (2004/09)
白水社
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シャドウ・パペッツ 

オースン・スコット・カード/著 田中一江/訳 ハヤカワSF文庫

「エンダーズ・シャドウ」「シャドウ・オブ・ヘゲモン」に続く、ビーンシリーズ第三弾。今回はヘゲモン・ピーターがアシルを利用しようと画策する場面から始まります。おうおう、いくらピーターと言えどもアシルの敵ではないような…。
この巻では、ピーター、ヴァレンタイン、エンダーの3人の子の両親であるジョン・ポールとテレサ夫妻の才能が遺憾なく発揮されています。お陰でピーターの可愛らしさが目立つこと(笑)。あらすじを紹介すると、今回の戦争がどういう経緯を辿ったかまでばれてしまうので控えますが、近未来の世界情勢は複雑だけれど頷けるかも(の、ような気がするだけですが…現在の状態にも詳しいとは言えないので)。
目先の問題には一応の決着を見る本書ですが、それでもビーンの根本的問題は解決せず。本国で来年刊行予定のShadow of the Giantの邦訳を待つしかないですね。しかしこの「パペッツ」も、刊行から邦訳が出るまで2年かかっているのですよ。とすると、続きが読めるのは2007年。うわ~遠すぎる。今回もこの本を読んだ後に「パペッツ」を読み返す必要があったし、それでも足りないので今から「エンダーズ・シャドウ」に入る予定。次回は全部終わるのに一週間かかるだろうな。そっか、予定が近づいたら先に復習しておけばいいかも。一巻ごとに複雑な筋立てなので何年も頭に留めて置けないのです…わはは(汗)。

シャドウ・パペッツ シャドウ・パペッツ
オースン・スコット カード (2004/10)
早川書房
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剣客商売 

剣客商売
池波正太郎/著 新潮文庫
数年前から読書仲間に進められていた「剣客商売」。時代物は好きなのだが、全16巻に恐れをなしてしまい、読もう読もうと思いつつも手を出しかねていたのだ。しかしここのところ、出先での待ち時間が多いので、そこで読むのに丁度いいかも?と思い、第一巻を借りてきた。
…いや~、参りました!途中で用事が出来ても読み止められない。他の時代物ではこんなことはなかったのに。兎に角面白いのである。小兵衛の人物設定なんて脱帽するしかない。60の小柄な好々爺で、40も歳の違う愛人(後に女房)おはるとじゃれあい、剣客としては一級品。ああ、なんと捉えどころのない、魅力的なお方なのでしょう(既に惚れてる)。第一巻の中では「まゆ墨の金ちゃん」での小兵衛が良かったですねえ。剣客と親心の板ばさみ、この描写の細やかなことよ。あー、続きが読みたいっ!
 
剣客商売その2
2004・10・18
昨日今日で4冊読了。中毒症状最高潮です♪
『天魔』
これは何といっても「約束金二十両」が面白かった!平内太兵衛さん、この後も出てくるように書いてありましたが何巻なのかな?益々シリーズ制覇に熱が入りますわい(笑)。
『白い鬼』
これは暗い話が多い…でも嫌いじゃないんですよね、同情の余地の無い悪人はしっかりやっつけてくれるし(笑)。
しかし、腕を切り飛ばされてしまう悪人さんの多いこと。この世界にリチャード・キンブルが迷い込んだら、“片腕の男”がいすぎて頭抱えるでしょうねえ。
『新妻』
「鷲鼻の武士」にまず大笑いしちゃいました。どっか抜けてる人って大好きなのです。今後も出てきそうだし、楽しみ。他は重い話が多いけれど、しみじみと読めました。
『隠れ蓑』
やはりお気に入りは「徳どん、逃げろ」。辛酸を舐めてきたらしい、その上強盗を生業とするのに憎めないですね、八郎吾どん。実は密かに小兵衛さんちに押し入る場面を期待してたのですが、残念(笑)。そして「隠れ蓑」に涙…。こういうのって弱いワタシ。

眠い… 剣客商売その3
2004・10・21
何故眠いかって?聞かないで下さいよお今更(笑)。
『狂乱』
いや~、何とも虚しいけど、でも読後感が悪くならないところが良いですねえ。「狂乱」は特に。
『待ち伏せ』
若き日の小兵衛が垣間見られる1冊です。大治郎も父親に似てきたような…。彼も30年後には好々爺になるのだろうか(笑)。
『勝負』
小兵衛も遂におじいちゃま。だからか、ほのぼのする話が目立ちます。「その日の三冬」は寂しかったけれど…三冬さん、以前はあまり好みではなかったけど、最近好感度アップです~。
『春の嵐』
わぉ・長編ですか。流石に長編も面白いっ。でも、短編のリズムに慣れてしまったし…やっぱり短編でしみじみが好みですなあ。これは他のと離してじっくり読んだほうがいいのかも。

剣客商売その4
2004・10・22
昨日今日でさらに4冊。
『十番斬り』
表題作「十番斬り」の壮絶さ、「同門の酒」の、どこなくほのぼのした風情、そして「逃げる人」。この1冊は粒ぞろいでした。

『波紋』
う~ん、因縁のすさまじきことよ。小兵衛の好みの女性も分かりませんなあ(笑)。かなり凝った短編が多かったような。

『暗殺者』
2冊目の長編。大治郎に勝るとも劣らぬ剣客が出てくるのでは、やはり短編に収まりきれますまい。この波川周蔵は良いですね~。

『二十番斬り』
おやおや、これも長編。しかもあの小兵衛さんが冒頭眩暈を起こすのだからびっくり。「短編のほうが…」と書いた私ですが、前言撤回この2編で長編の魅力にはまりました~。

剣客商売その5
2004・10・25
遂に剣客商売最終巻。あーあ、読み終わってしまった…。

『浮沈』
山崎勘之介…このキャラクターは異質ですね。しかしシリーズ最後の作品には相応しい人物かも。小兵衛さんや他の登場人物の将来にも触れてあって、思わず唸ってしまいました。でも…でももっと読みたかったなあ、このシリーズ。

『ないしょ ないしょ』(剣客商売番外編)
女性を主人公にした長編。小兵衛は時折顔を出すだけですが、流石の存在感。50代の小兵衛さんも良いですねえ。10代半ばで両親を亡くし下女となったお福の人生の凄まじきことよ…。これは早いとこ購入せねばなりませんな。

現在は同じく番外編の『黒白』中。こっちも面白いけれど、これを読了してしまったら、もう全て終わりなんだな…寂しいっ。

村田エフェンディ滞土録 

梨木香歩/著 角川書店

明治の頃、土耳古(トルコ)皇帝の招聘で歴史文化の研究の為に彼の地へ赴いた村田。
村田の下宿先は、少人数ながら人種の坩堝なのです。女主人のディクソン夫人は英国人、考古学者オットー氏は独逸(ドイツ)人、同じく考古学研究に来たディミトリスは希臘(ギリシア)人、下働きのムハマンドのみが土耳古人。その上的確な言葉を発して皆を戸惑わせる鸚鵡まで。しかし彼らは文化や宗教の違いを乗り越え、村田のかけがえの無い友垣となっていきます。
話は土耳古の風俗習慣、西欧との関わりや考古学への姿勢などが、村田の独白にて語られていきます。下宿の壁に宿る太古の神と、日本の稲荷、そして埃及(エジプト)の神の巴戦はとても面白い。姉妹編の「家守綺譚」を彷彿とさせるエピソードでした。 
しかし、楽しく読んでいられたのもつかの間、時代は不穏な様相を呈し始めて…
帰国後の村田の、最後の独白には不覚にも涙腺が緩んでしまいました…。
「家守綺譚」よりも重く悲しい小説ですが、読み応えがあり、「どちらかを選べ」となったらやはりこっちかも。文庫が出たら買おうかな。

村田エフェンディ滞土録 村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩 (2004/04/27)
角川書店
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紙葉の家 

マーク・Z・ダニエレブスキー/著 嶋田洋一/訳 ソニーマガジンズ

アパートの一室で、孤独な老人が死んだ。そのアパートに住む友人に頼まれ、部屋の片づけを手伝うことになったジョニーは、そこでおびただしい数の紙束を見つける。そこに書かれていたのは、『ネヴィットソン記録』と名づけられた記録映画の解説だった。
物語は、『ネヴィットソン記録』の内容と、ジョニーの手記が交互に進む形になっている。『ネヴィットソン記録』には、関係を修復しようと引っ越してきた写真家ウィル・ネヴィットソンの一家が、新しい家で体験した恐ろしい事件が事細かに記されている。外壁よりも長い室内、突如出現した廊下、その奥にある果てしない虚無…その上ネヴィットソンのふたりの子供たちが、全く同じに真っ黒の廊下の絵を何枚も描くのだ。
これだけでも充分に奇怪なのに、ばらばらの紙片に記されたこの記録をまとめようとする青年ジョニーの精神が次第に崩壊する様は同じように壮絶である。虚無の、果てしない暗闇の恐ろしさ。確固とした拠り所がひとつも無い不安定さ。

縦書きだった文章が横書きになり、天地が逆に書かれ、鏡文字になり棒線で消され…。活字をひたすら追い続け、本をぐるぐる回し、鏡に映していると、小説を読んでいるのだということを忘れ、この虚無が現実のものとして迫ってくるように感じられる。これ、実は真面目に恐かった…
そして、やっと『ネヴィットソン記録』から抜け出しほっとするのもつかの間、最後の、ジョニーの母親の手記でまた混沌に引きずり込まれるのだ。
「この紙葉をめくる者、すべての希望を捨てよ」…全くその通り。

装丁はとっても綺麗なのだけど、この厚さと重さ。ぐるぐる回しながら読むのは、特に借り本なので神経使うし。まっこと辛かったっ(笑)。注釈の細かい活字が何ページも続くし。
しかしそれだけのことはある。一部変態本との声もあり、勿論充分に頷けるのだが(笑)滅多なことでは感服しない活字中毒者でも諸手を挙げて「参りましたっ!」と言うしかない本だと思う。

紙葉の家 紙葉の家
Mark Z. Danielewski、嶋田 洋一 他 (2002/12)
ソニーマガジンズ
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山椒魚戦争 

カレル・チャペック/著 栗栖継/訳 ハヤカワSF文庫

スマトラ諸島の小島で、謎の生物が発見される。両棲で人懐こい、山椒魚に似ているが直立歩行するそれらを発見したヴァン・トフ船長は、真珠とりに山椒魚たちを使おうと思いつく。
最初は動物を飼いならして使役する程度のことだった筈なのに、山椒魚たちは言葉を話し出し、農業は山椒魚用の食物生産に依存、知識人たちは山椒魚の権利を確立すべく運動を始め、企業は海の開発のために山椒魚に機械や爆発物を提供し…
全ては終末に向けて必然的に進んでいく。巻末にチャペックが書いているとおり、不可避であろうラスト。個人的に風刺的な作品はあまり好みではないのだが、そんなことは言っていられない、面白くて止められないのだ。
この小説は1936年に書かれたため、各国の主張は当時の世相を反映したものとなっているが、人間の行動は政治情勢がどうあれ結末は変わらないんじゃないだろうか?舞台を現代に移しても、やっぱりこの道を進むことになるんだろうな…。
第二次大戦前夜のナチスの脅威を描いたとされるこの小説だが、今ではあまり感じ取ることが出来ない。どちらかといえば、何時の時代だろうと人間のやることって変わっていないんだな…と思う。やはり作者の執筆動機がなんであれ、どんな時代であれ、普遍性の高い物語なのだろう。

ドイツとロシアで出版された翻訳では、自国に都合の悪いくだりは削除されているらしい。なんかこれ読むと理解できるなあ。日本はその頃まだヨーロッパでは重要視されていなかったので、削除したくなるほどの描かれ方はしていない。お陰で完訳で読めるのである…嬉しいけれどちょっとフクザツかも(笑)。

山椒魚戦争 山椒魚戦争
カレル チャペック (2003/06/13)
岩波書店
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白い果実 

ジェフリー・フォード/著 山尾悠子・他/訳 国書刊行会

独裁者ビロウの内面から作り上げられた「理想形態市」。恐怖に支配されているこの街の、ビロウの信任も厚い一級観相官クレイは、不死をもたらすという「白い果実」の消失事件を調査する為、属領へと赴く。死後の身体さえも搾取される、貧しい属領の住民たちと、軽蔑のみで彼らと接するクレイ。このクレイの人物像には驚かされた。思わず苦笑を誘われる程に、極限まで肥大した自己愛。他人は全て外観を数値化した観相学的特長のみで分類され、彼らの人間性も発するお世辞に含まれる皮肉も、クレイの心には届かない。そして時折挟み込まれる彼の苦渋と裏切りに満ちた過去…。幻想小説ではあるけれど、描かれているのは重苦しく逃げ場を閉ざされた幻想である。しかし、流麗な文体と、二転三転する魅惑的なストーリー、その上諧謔的でありコミカル、冒険活劇風ですらある物語。読み始めたらもう途中下車は不可能なので、興味を持たれた方は時間のある時に取り掛かって欲しい。一応の解決をもって終わる本書だが、疑問や謎は未解決のまま。 …と思いきや、やはり続編があるらしい。後書きによると、この物語は全3巻で完結するとのこと。翻訳の山尾悠子氏には出来れば本人の新しい作品を期待したいところだが、この続きを待たされるのも辛すぎる。その上本書で既に山尾氏の文体が頭に刻み込まれてしまったので、訳者を変えるなどもってのほか。ジレンマです…それも「理想形態市」の偽楽園のように逃げ場のない。ひたすらに待つしかないです…。

白い果実 白い果実
ジェフリー フォード (2004/08)
国書刊行会
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家守綺譚 

梨木香歩/著 新潮社

 ボートで湖に出たきり帰らぬ人となった同級生の家族が引っ越すことになり、残った家の守として住み込むことになった、駆け出しの文筆家征四郎。しかしこの家が只者ではない。庭の百日紅に懸想される、床の間の掛け軸からは亡きこの家の息子高堂が尋ねてくる。池には河童、近所の川には川獺。拾った野良犬は有名な仲裁犬となり、遠くからもお呼びがかかる。物の怪に出会うたびに驚く征四郎に、隣家の細君や編集者の後輩は「常識ですよ」と諭すのだ。この飄々とした雰囲気が楽しい。人間も物の怪も死者も、この家ではあたりまえに共存している。物の怪たちもごく自然に生活に溶け込んでいるので、自己主張の強い悪戯などはしないのである。八百万の神々は彼らもを守っているのであろうなあ。他の登場人物たちも生き生きして、無理せず慌てず驚かず…長虫屋がいいですね、物の怪よりも謎(笑)。明治という舞台設定を生かした、浪漫溢れるファンタジーでありました。普段馴染みの薄い日本物の小説ですが、こういう世界ならばすんなりと楽しめるのです。

 

家守綺譚 家守綺譚
梨木 香歩 (2006/09)
新潮社
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その名にちなんで 

ジュンパ・ラヒリ/著 小川高義/訳 新潮社クレストブックス

カルカッタ在住のベンガル人アシマは、見合い結婚してすぐに夫アシュケと共にアメリカへ移住する。
異国で生まれた長男に、アシュケは生涯の転機となった事故で自分の命を救った本の作家にちなみ「ゴーゴリ」と名づけるが、ゴーゴリは成長と共に自分の名を恥じるようになり、その後大学入学を切っ掛けに改名に踏み切り「ニキル」と名乗る。生まれ変わった彼は戸惑いつつも新しい生活に飛び込んでいくが…

ベンガルの風習を守り続け、アメリカでもベンガル人社会の中のみで生きようとする両親と、生まれ育ったアメリカ社会に溶け込もうとする子供たち。しかし、アメリカ文化の中でのみ育ったアメリカ人と同じにはなりきれないゴーゴリの生き方が、名前と女性遍歴とで著される。
うまい!としか言いようのないエピソードの積み重ねが素晴らしい。もう絶賛である。読後には男物の靴を履いてみるアシマ、インドでアメリカンボップスのテープを奪い合う兄弟、ニューハンプシャーで自然に溶け込んだ生活をおくるラトクリフ一家の映像がしっかり頭に刻みつけられていた。この完璧な小宇宙を作り上げたのが、まだ30代の女性というのだから嬉しい驚きである。珠玉の短編集「停電の夜に」で酔わせてくれたかと思うと今度はこの長編…読書好きで良かった!

この先ネタバレ領域です、ご注意を。

 


あとがきで「ほとんど憎まれ役」と書かれていたモウシュミの存在が際立っていたと思う。同じような環境に育ち、同じようにそれらを拒否しながらも、最後は両親の生きかたを理解し引き継いでいこうとするゴーゴリと、それを自分から破壊してしまうモウシュミ。彼女はベンガル社会で生きていくことに耐えられず、しかし芯からアメリカに溶け込むことも出来ない…唯一両方から遠く離れたパリでの生活のみが本当の人生であったような彼女があまりにも痛ましい。これは両親の育て方の差と言えるのだろうが、本人が気づいていないのが一番の悲劇なのかも…。
そして静かで目立たないが、両親が少しづつ、そして着実にアメリカ社会に根を下ろしていく様子が心に残る。アシマの生き方は、一見女性としての宿命に流されているように見えながら、実は一番したたかなのかも知れない…勿論礼賛の意味で。

あれこれとだらだら書き連ねてしまいましたが、言いたいのはひとことだけ…最高です!


その名にちなんで その名にちなんで
ジュンパ・ラヒリ (2004/07/31)
新潮社
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海外作家(アメリカ・イギリス) 

アンソロジー

ハーヴェイ・ジェイコブズ・他(SF)

ア行

バリー・アンズワース  仮面の真実

デイヴィッド・イーリイ ヨット・クラブ

コニー・ウィリス 最後のウィネベーゴ

アニー・トレメル・ウィルコックス  古書修復の愉しみ

R・D・ウィングフィールド  夜明けのフロスト

P・G・ウッドハウス  

比類なきジーヴス よしきた、ジーヴス エムズワース卿の受難録 

ウースター家の掟 でかした!ジーヴス マリナー氏の冒険譚

ブランディングズ城の夏の稲妻

ジョー・ウォルトン  アゴールニンズ 

スティーヴ・エリクソン  黒い時計の旅

ポール・オースター ミスター・ヴァーティゴ

カ行

オーソン・スコット・カード  シャドウ・パペッツ 

スティーヴン・キング  コロラド・キッド

A・B・コックス  ブリーストリー氏の問題

サ行

ヘンリー・ジェイムズ  ねじの回転

P・D・ジェイムズ  殺人展示室

シオドア・スタージョン ヴィーナス・プラスX

ミュリエル・スパーク  運転席  シンポジウム  邪魔をしないで  

マーカス・デュ・ソートイ  素数の音楽

ロバート・J・ソウヤー  ホミニッド-原人

タ行

マーク・Z・ダニエレブスキー  紙葉の家  

ジェイムズ・ティプトリー・Jr  輝くもの天より堕ち

ピーター・トレメイン  アイルランド幻想 幼き子らよ、我がもとへ

ナ行

マシュー・ニール 英国紳士、エデンへ行く   

ハ行

アントニイ・バークリー シシリーは消えた

ジャスパー・フォード 文学刑事サーズディ・ネクスト1・ジェイン・エアを探せ!

ジェフリー・フォード  白い果実 シャルビューク夫人の肖像

シャーロット・ブロンテ  ジェーン・エア

アルフレッド・ベスター  願い星、叶い星

マ行

ジョージ・R・R・マーティン  タフの方舟1・禍つ星

ヤ・ラ・ワ行

クレイグ・ライス 暴徒裁判

ジュンパ・ラヒリ  その名にちなんで 

ジャック・リッチー  クライム・マシン 10ドルだって大金だ

海外作家(英米以外) 

アンドレイ・クルコフ  大統領の最後の恋

フリオ・コルサタル すべての火は火

ヨースタイン・ゴルデル  サーカス団長の娘

カレル・チャペック   山椒魚戦争  ポケットからでてきたミステリー 

ウラジミール・ナボコフ  絶望

アリステア・マクラウド 冬の犬  

ジョルジュ・ランジュラン  

マリオ・バルガス・リョサ  継母礼賛

 

日本人作家 

池澤夏樹 マシアス・ギリの失脚

池波正太郎  剣客商売   

岡本綺堂  半七捕物帳

梨木香歩  家守綺譚 村田エフェンディ滞土録

宮部みゆき 孤宿の人

アイザック・アシモフ著作リスト 

ファウンデーションシリーズ
 
ロボットシリーズ
 
シリーズ外SF長編
 
SF短編集
 
ミステリ
 
科学エッセイ
 
自伝・その他
アシモフ自伝

アシモフ自伝 


アシモフ自伝Ⅰ~思い出はなおも若く

In Memory Yet Green(1979)

アシモフ自伝Ⅱ~喜びは今も胸に

In Joy Still Felt(1980)

日本語版・各上下巻/早川書房 /絶版


この本は、残念ながら現在絶版である。ハードカバー4冊で一万円超の値段、それに見合う分厚さで敬遠されたのかも。しかし勿体無い!こんな面白い本は滅多にあるもんじゃない。SFもエッセイも科学解説書だって読みやすく面白く書いてしまうアイザック・アシモフの自伝なのだから。
最初は面食らうかもしれない・・・アシモフの生地、ロシアのペトロヴィッチーの話が延々と続くのだ。ご先祖の話から両親の馴れ初めと新婚時代を経て、やっとアシモフが生まれるのは50ページを過ぎてから。しかしこれも退屈とは無縁、雑学の宝庫アシモフ博士の楽しい薀蓄満載なのである。
その後アメリカに渡り、彼の幼年期が語られる。なんと生意気で可愛げのない、張り倒したくなるような子供!飛びぬけて頭が良く、しかし先生をやり込めることを最高のジョークと思っているのだから始末に負えない。成人した後に彼は自分を「みな、私のことを歯噛みしつつもなんとか耐えている」と評しているが、大人になってからもこれなのだから、子供時代なんてもう(笑)。
徴兵されてすら茶目っ気を抑えられず、文書を作成するのに叱責覚悟で悪戯をしかけ、しかし悪戯を見抜けなかった上官は彼を賞賛してしまうのだ。よくまあ無事で除隊できたこと・・・。
文筆家として名を成した後も根っこは変わらず「育ちすぎた子犬のよう」なアシモフ博士。随所に出てくるあけっぴろげな自画自賛に嫌味がまったく感じられないのは、彼があくまでも誠実で真摯であり、周囲への、文筆への愛情に溢れている愛すべき人物だからなのだろう。
そしてSFファンにはたまらないジョン・キャンベルとの出会いから、没ばっかり続いていた駆け出しの頃、SF黄金時代を支えた作家たちとの交流も詳細に書かれている。この本を買ってから20年近くになるが、毎年読み返しても飽きることがない。
現在復刊ドットコムにて復刊交渉予定となっているが、実現するのなら是非文庫にして貰いたい。500ページ近いハードカバーが4冊ではまた購入する人が限られてしまうだろうし、何よりも重いのだっ(笑)。文庫版を常に傍に置いて、折に触れ読み返したい。ああ、早く復刊交渉してくれないかなあ。100票はとっくにクリアしてるんだし。


I. Asimov: A Memoir (1994)


早く翻訳刊行してください!!!

科学エッセイ収録作品リスト 

科学エッセイ収録作品リスト

 

空想天文学入門 Fact and Fancy (1962)
ハヤカワ・ライブラリ 1962年発行/絶版

ノー・モア氷河期?/大気果つるところ/ニュートンに追いつけ、追い越せ/逃げるか、捕まるか/太陽系名所案内/冥王星のかなた/恒星への階段/二重太陽の惑星/ひとりぼっちの惑星/明滅するものさし/望郷/噫、来り去る/とほうもない思いつき/すべて疑え

 

空想自然科学入門 View from a Height(1963)          
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050021-5 1978年発行

まあ、その辺の大きさだ/卵とチビ/これが生命だ!/われわれの知らないようなやつ/完全無欠な元素/秤りっこ/偶数が勝ち/ほら、聞いてごらん/極小の時間単位/お静かに!お静かに!/現代悪魔学/上はどこまで高いか/熱いやつ/惑星調理法/トロイの墓場/もちろん、木星だとも!/表面的に言えば

 

地球から宇宙へ From Earth to Heaven(1963)          
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050021-5 1978年

ああ、東は西、西は東/果てしなき水/地球の上と下/地球の島/未来の時/科学の貴族たち/感嘆符!/実験室に死す/科学者は誰でしょう?/不確かさの確かさ/先生に見られないように/ミュー大陸/時間と潮汐/ダモクレスの岩/クシャーッ!/陽子で数える

 

時間と宇宙について Of Time and Space and other things(1965)   
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050023-1 1978年発行

一年は何日あるか?/ものみな始めあり/天上の幻の線/天界の動物園/太陽系総ざらえ/ぐるぐる、ぐるぐる/衛星漫歩/最初でビリ/夜はなぜ黒い?/銀河系全体がいっぺんに/忘れちまえ!/ものの数じゃない/e=mc2/エネルギーの一切れ/変わり者歓迎!/反応促進剤/ゆっくりと動く指

 

生命と非生命のあいだ Is Anyone There?(1967)  
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050024-X 1978年発行

精神を支配する物質/覚えている、覚えている/ひもじい人たち/血がものをいう/化学的個性/分子的適者生存/酸素と比喩/一つまみの生命/人間を組み立てる/燃える元素/新しき光、出でよ/海中の鉱床/進化する大気/月の大気/人間と太陽/聞きなれない星/宇宙を測る物差し/片道切符のタイムトラベル/宇宙の誕生と死/研究材料のない科学/われら中間型生物/誰かそこにいますか?/火星人の解剖学/空飛ぶ円盤について/1990年の生活/二千十四年の世界博覧会/豊かさにも限りあり/生命の代価/月と未来/太陽系と未来/宇宙と未来/現実の中への逃避/無学礼讃/アキレスの剣/ロボット建造の心得/狡猾なマーティンおじさん/旧き懐かしき月の眺め

 

わが惑星、そは汝のもの The Stars in their Courses(1971) 
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050025-8 1979年発行

軌道の星/いびつな太陽/月の個人芳名簿/混乱する宇宙/一度に二度ずつ/ボールを投げる/地球を質量した男/ルクソンの壁/科学という名のゲーム/遠さの距離/繁殖する元素/隙間を埋める/実現しなかったノーベル賞/運命の雷/科学者の罪/幾何学級の威力/わが惑星、そは汝のもの

 

発見、また発見! Twentieth Century Discovery(1969)     
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050026-6 1985年発行

六本足戦争-殺虫剤プロジェクト/はじめに…ありき-生命の起源/どこまでも小さく・・・-物質の構造/惑星を見直す-太陽系探査/のぼれ、高く、より高く-宇宙旅行

 

たった一兆 Only a Trillion(1957)                            
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050027-4 1985年発行

消える原子/体内でおこる爆発/ヘモグロビンと宇宙/紙の上の勝利/正常の異常さ/惑星の大気/まったくの偶然によってではなく/太陽をとらえる/ウニと人間/息をはずませて/チオチモリンの驚くべき特性

 

次元がいっぱい Adding a Dimension(1964)                         
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050028-2 1985年発行

Tフォーメイション/1、10、靴紐しめて/無限あれこれ/ひときれのパイ/商売道具/実在する虚数/接頭辞をつければ/絶対真空/光夢想/緩慢な燃焼/あなたにもゲール語が話せる/失われた一世代/わたしの型じゃない/地球の形は/トウィンクル、トウィンクル、リトルスター/アイザック賞受賞者発表

 

未知のX X Stands for Unknown(1981‐1983)           
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050124-6 1986年発行

君の良い本を韻文で読め/四〇〇オクターブ/早く死にすぎた三人/未知のX/兄貴/パンと石/「e」の違い/結局は珪素生命だ/長い楕円/時間と状況の変転/誰とかの軌道/待ちかまえて/どまんなか/遠い僻地/純金から金箔を剥ぐ/大地の円/夜の軍隊

 

存在しなかった惑星 The Planet that Wasn't(1976)  
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050126-2 1986年発行

存在しなかった惑星/オリンパスの雪/途方もない驚き/逆回転/神々の橋/第三の液体/胆汁は、全体として/電気の匂い/静かなる勝利/空気が変わる/邪悪な魔女は死に絶えた/「夜来たる」現象/さまよえる宇宙船/逆コースをめざして/考えることを考える/東方の星/柔道式論法

 

素粒子のモンスター The Subatomic Monster(1985)                         
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050135-1 1987年発行

素粒子のモンスター/衆をもって一をなす/二つの質量/勝利したゼネラル/衛星の近況/巨人の腕/赤い太陽の惑星/愛は世界をまわらせる!/混沌の性質/緑、緑、色は緑/再び考えることを考える/ひとめぐりして/どんなトラックだって?/太陽があまねく照らすところ/空へ昇る/歴史を一年に縮めれば/宇宙を一年に縮めれば

 

真空の海に帆をあげて The Dangers of Intelligence and other science essays(1986)
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050145-9 1988年発行

二六個の文字/文字盤かデジタルか/知能の危険/些細なもの/緑色の敵/滅びゆく森林/八〇〇〇年の暦/第三の感覚/理屈抜き/夢/夢を見るやもしれぬ/出発点/立ち上がる/DNAの〝指紋〟/我らの進化する肉体/究極の複雑さ/熱をあるべき場所に/渇きが増す/基本に戻って/拾い放題の金属/くっつけ!/もっと高い塔/二度と行方不明にならない/決して迷子にならない/縮んでいくマイクロチップ/その単語を綴れ!/電子郵便/紙を超えて/静粛に!/確率を大きくする/組み立てラインを解体する/機械と話す/新しい職業/ロボットが敵になる?/知能が協力して/軽量の追及/金!/超重原子核/鏡の国のフルコース/四×四×四…/乾きかけた水たまり/戻れ!戻って来い!/おーい、アラスカ、さあ行くぞ!/変わりゆく一日の長さ/上昇中/ワンツー・パンチ/行方不明のクレーター/ネメシス/恐るべき塵/地球見物/鉛を追放する/水を分解する/ゴサマー・ウィングズ/質量を残らず/いやがうえにも熱く/もっとも弱い波/断片上の鏡/焦点を鮮明に/真空の海に帆をあげて/月の飛沫/衛星をかすめて/最大の衛星/見えない気体/10番目/二重星/生まれかけている惑星/中間に/次の爆発/人びとのいる場所/見えない小惑星/毎秒六四二回のチクタク/所在不明な質量の謎

 

見果てぬ時空 Far as Human Eye Could See(1987)  
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050152-1 1989年発行

発見する代わりに、つくればいい!/食塩と電池/流れの問題/線を押しつける/昇れ、うるわしき太陽よ!/負の毒物/微量を突きとめる/魔性の元素/ちょっぴりのパン種/生化学的なナイフの刃/はるかなる地底/調子が狂った時世/空虚の発見/空虚の科学/小さいことは多いこと/スーパースター/人間の目に見えるかぎりで

 

人間への長い道のり Out of the Everywhere(1990)    
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050165-3 1991年発行

月の位置が狂ったせいだ/正しい問いかけ/いたる所から-/-やって来る/人間への長い道のり/背を伸ばして、すっくと立つ/世界で一番長い川/誰か聞いているかい?/認識されない危険/存在しなかった放射線/鉄よ、冷たい鉄よ/磁極を求めて/生命の火/ランプの奴隷/屋根のある馬/容赦ない一分/聖なる詩人

 

宇宙の秘密 The Secret of the Universe(1991)                       
ハヤカワ文庫NF ISBN4-15-050168-8 1992年発行

空をぶちこわす/異質な空気/距離を変える/月と瓜二つ/天体の秩序/1番近い恒星/太陽の重さを測る/小さな星の素材/ピッチの重要性/はるかな昔、遠く離れて/宇宙のレンズ/宇宙の秘密/塩を作る元素/真の支配者/ホット、コールド、コンフージョン/平常どおり営業/とにかくノーと言え?

 

変わる! Change!(1981)
河出文庫 ISBN4-309-47052-1 1984年発行/絶版

未来論の未来?/不滅なるもの/全世界に呼びかける/低下する出生率/成人教育/だれがお金を必要とするか?/新しい洞窟/来たるべき四旬節/モンスターはどこに消えた?/ちっちゃな地図/他人の君/君のスペア・パーツ/種さまざま/人類だけが/ちっちゃな奴隷たち/調整不良/男の子?それとも女の子?/みんな心の中に/直接接触/思考制御/精緻なプリント/押しボタン図書館/君のゲームの仕方/新しい先生/お望みのものはなんでも!/友人を作る/わが知的な道具たち/ロボティクスの法則/石炭に戻って/最後の燃料/海洋の温度差/地理にかたよらないエネルギー!/全部をエネルギーに転換/梱包された水/無限の鉱床/サイクルを完成する/深く、深く、深く!/消えゆく元素/もっとも手近な資源/中央の海/地球に油をさす/変わる一日の長さ/あの氷をつかめ!/白い背景/ほぼ一掃されて/どうなるか気象/まっすぐ突き抜け/外部宇宙からの悪疫/星を聴く/真夜中の眼/宇宙の監視を/距離による安全性/世界よ、さようなら/大きいヤツを捕らえる/明るい天界工場/空にかかるパイ/飛べる、飛べる、飛べる!/プレイボール!/今何時?/地球明りの下で/オレンジ・サークル/すべてが静止しているところ/求む-有機暗黒の世界/まどわす太陽/海の世界/未来の水夫/スピードの限界の下で/星に向かって!/検疫隔離/宇宙の地下鉄線

 

誤りの相対性 The relativity of Wrong(1988)  
地人書館 ISBN4-8052-0319-6 1989年発行

二番目に軽いもの/分子につけた標識/下宿のおかみのパイのおかげ/内部に潜む敵/光をもたらすもの/まずは骨の話から/月と人間/口にだして言えない惑星/縮む惑星/小さな天体/新しい星/燃え上がる星/大爆発をする星/袋小路/対概念!/遠く、さらに遠く!/誤りの相対性

 

アジモフ博士の輝け太陽 The Sun Shine Bright(1982)  
社会思想社現代教養文庫 ISBN4-390-11080-2 1983年発行/絶版

消えておしまい、この忌まわしいしみ!/輝け太陽/最も高貴な金属/こんなに小さいなんて?/シリウス実情/地平線の下に/わずか30年で/伸びゆく1日/移り気な月/役立たずの金属/中性子登場!/神の佑け/クローン・クローン、わが分身/科学者も人の子/「公然の秘密」兵器/続・人間がいっぱい!/善人こそは生き残る

 

アジモフ博士の地球の誕生 Counting the Eons (1983)
社会思想社現代教養文庫 ISBN4-390-11145-0 1985年発行/絶版 

空気のように軽い?/わたしには深すぎる/圧力の下で/わたしの発明したことば/そう、バーン!と一発で/日にちで数えてみよう/地球の誕生/ミルトンよ!汝いまに生きてしあらば

 

アジモフ博士の宇宙の誕生 Counting the Eons (1983)
社会思想社現代教養文庫 ISBN4-390-11146-9 1985年発行/絶版

韋駄天星バーナード/星々の舞踏/物質の根源を求めて/そして幾多の夏を過ぎ、陽子は死せり/アインシュタインよ、あれ!/宇宙の誕生/決定的な不釣合い/全と無/無と全  

 

アジモフ博士の極大の世界・極小の世界Of Matters Great and Small(1974)
社会思想社現代教養文庫  1982年発行/絶版 

高速度測定小史/宇宙観拡大小史/不動?の北極星/12星座と12宮/日食とわたし/月の舞踏/小惑星現況/かく生命はう生まれり/猿眺むれば我が身にも似て/炯眼なり、SF作家!/アルミニウム?アルミナム?/崩壊しゆく原子/アルファ粒子とベータ粒子/至近距離からの放射線/消えかかる蝋燭/近道は2+3/うんざりだ!

 

アジモフ博士のハレー彗星ガイド   
社会思想社現代教養文庫  絶版・未読

 

アジモフ博士の地球・惑星・宇宙  
現代教養文庫  絶版・未読

 

輝けクエーサー 
培風館  絶版・未読

 

ミステリ 

長編ミステリ

 

象牙の塔の殺人 The Death Dealers (1958)  
創元推理文庫 ISBN4-488-16706-3 1988年発行 

大学の構内で、1人の学生が毒ガスを吸って死亡した。当初は事故か自殺とみなされるが、指導教官のブレイドは死因に疑問を抱く。疑問を抱いたきっかけが「化学を学ぶ者が特性の違う酢酸ナトリウムとシアン化ナトリウムを間違える筈がない」ですからね…。流石生化学教授アシモフ博士初のミステリ長編小説。

 

ABAの殺人 Murder at the ABA(1976)
創元推理文庫 ISBN4-488-16704-7 1979年発行 

ABA(アメリカ図書販売協会)の年次大会で起きた殺人事件。作家ダライアス・ダストは第一発見者となってしまう。更に被害者を作家に育て上げた経緯もあり、独自に調査を始める。
ミステリなのですが、アシモフ本人が出てくるは、ハーラン・エリスンの注釈があるはで完全に仲間落ちですね。でも伏線の貼り方、ちょっとした会話など、古きよきミステリの世界。アシモフの語り口が好きな方なら楽しめる1冊です。

 

 

ミステリ短編集

 

黒後家蜘蛛の会1Tales of the Black Widowers(1974)
収録作品:創元推理文庫 ISBN4-488-16701-2 1976年発行  

改心の笑い/贋物のPh/実を言えば/行け、小さき書物よ/日曜の朝早く/明白な要素/指し示す指/何国代表?/ブロードウェーの子守唄/ヤンキー・ドゥードゥル都へ行く/不思議な省略

毎月1回、ミラノ・レストランで開かれる「ブラック・ウィドワーズ」の会合。集まるのは画家、作家に弁護士、学者などいずれ劣らぬ専門家たち。しかし、この会合で謎が話題に上ると、解決するのは給仕のヘンリーただ1人なのです。ヘンリーの謎解きも興味深いですが、読みどころはなんといってもメンバーたちの楽しい会話と皆が出す様々な謎解き。この連作短編集は雑学の宝庫です。楽しく面白く知識も身に付く、万一無人島に流されるなら是非持っていきたい本です。

(2巻目以降は収録作のみ記載)

 

黒後家蜘蛛の会2More Tales of the Black Widowers(1976)
創元推理文庫 ISBN4-488-16702-0 1978年発行 

収録作品:追われてもいないのに/電光石火/鉄の宝玉/三つの数字/殺しの噂/禁煙/時候の挨拶/東は東/地球が沈んで宵の明星が輝く/十三日金曜日/省略なし/終局的犯罪

 

黒後家蜘蛛の会3Casebook of the Black Widowers(1980)
創元推理文庫 ISBN4-488-16703-9 1981年発行 

収録作品:ロレーヌの十字架/家庭人/スポーツ欄/史上第二位/欠けているもの/その翌日/見当違い/よくよく見れば/かえりみすれば/犯行時刻/ミドル・ネーム/不毛なるものへ

 

黒後家蜘蛛の会4Banquets of the Black Widowers(1984)
創元推理文庫 ISBN4-488-16705-5 1985年発行 

収録作品:六千四百京の組み合わせ/バーにいた女/運転手/よきサマリア人/ミカドの時代/証明できますか?/フェニキアの金杯/四月の月曜日/獣でなく人でなく/赤毛/帰ってみれば/飛び入り

 

黒後家蜘蛛の会5Puzzles of the Black Widowers(1990)
創元推理文庫 ISBN4-488-16708-X 1990年発行 

収録作品:同音異義/目の付けどころ/幸運のお守り/三重の悪魔/水上の夕映え/待てど暮らせど/ひったくり/静かな場所/四葉のクローバー/封筒/アリバイ/秘伝

 

ユニオン・クラブ綺譚 The Union Club Mysteries(1983)
創元推理文庫 ISBN4-488-16707-1 1989年発行 

収録作品:逃げ場なし/電話番号/物言わぬ男たち/狙撃/艶福家/架空の人物/一筋の糸/殺しのメロディー/宝捜し/ギフト/高温 低温/十三ページ/1から999まで/十二歳/知能テスト/アブルビーの漫談/ドルとセント/友好国 同盟国/どっちがどっち?/十二宮/キツネ狩り/組み合わせ錠/図書館の本/三つのゴブレット/どう書きますか?/二人の女/信号発信/音痴だけれど/半分幽霊/ダラスのアリス

ユニオンクラブに集う4人。グリズウォルドはいつものように船を漕いでいる。しかし一旦謎がかけられるや否や彼はすぐさま眼を開け、奇想天外な謎解きを披露する。「黒後家蜘蛛の会」とは同根の作品ですが、ヘンリーがあくまで控えめであるのに対し、グリズウォルドは自慢屋の薀蓄たれ。両方読み比べるのも面白い。

 

小悪魔アザゼル18の物語Azazel(1988)
創元推理文庫 ISBN4-10-218608-5 1996年発行 

収録作品:身長二センチの悪魔/一夜の歌声/ケヴィンの笑顔/強い者勝ち/謎の地響き/人類を救う男/主義の問題/酒は諸悪のもと/時は金なり/雪の中を/理の当然/旅の速さは世界一/見る人が見れば/天と地と/心のありよう/青春時代/ガラテア/空想飛行

身長2センチ、願い事を叶えてくれる小悪魔アザゼル。しかし結果は必ず大迷惑、でも善意は疑えない…ここが悪魔たる所以か?軽く楽しめる一冊です。アシモフには珍しいファンタジーの連作短編集。

 

未訳作品

The Best Mysteries of Isaac Asimov(1986)

The Return of Black Widowers(黒後家蜘蛛の会6・2003)

SF短編集 

われはロボット I, Robot(1950)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010535-9 1983年発行

収録作品:ロビイ/堂々めぐり/われ思う、ゆえに…/野うさぎを追って/うそつき/迷子のロボット/逃避/証拠/災厄のとき

パウエル・ドノヴァンを主人公としたスラップスティック風味の強い作品を中心とした短編集。ロボット3原則の元になった最初のロボットもの短篇「ロビィ」(1940)も収録。

 

火星人の方法 The Martian Way and other stories(1955)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010492-1 1982年発行

収録作品:火星人の方法/若い種族/精神接触/まぬけの餌

 慢性的な水不足に悩まされる火星。しかし、地球政府は火星への水の割当量を極端に削減しようとする。窮地に立たされた火星移民の取った方法は…表題作の「火星人の方法」(1952)他、ユーモア色の強い短編集。

 

地球は空き地でいっぱい Earth is Room Enough(1957)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010778-5 1987年発行

収録作品:死せる過去/SF成功の要諦/投票資格/悪魔と密室/子供だまし/高価なエラー/住宅難/メッセージ/お気に召すことうけあい/地獄の火最後の審判/楽しみ/笑えぬ話/不滅の詩人/いつの日か/作家の試練/夢を売ります

 初期~中期の短篇を集めた本書には、ロボット短編集に収録されなかった「お気に召すことうけあい」や、かなり初期の作品らしくパンチカードで回答する(!)マルチバックの「笑えぬ話」などが収録されている。しかし、他の短編集には載っている初出雑誌名や発表年が、本書のみ記載が無く非常に残念。

 

停滞空間 Nine Tomorrows(1959)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010357-7 1979年発行/重版未定

収録作品:見よ、いまここに成し遂げる!/プロフェッション/ナンバー計画/やがて明ける夜/ヒルダぬきでマーズポートに/やさしいハゲタカ/世界のあらゆる悩み/ZをSに/最後の質問/停滞空間

 アシモフ自身が自分の短篇のベスト1という「停滞空間」(1958)は、1人の看護婦とネアンデルタール人の少年の交流を描いた傑作。また万能コンピューターのマルチヴァクを主人公にした「最後の質問」(1956)は、アメリカ各地のプラネタリウムで朗読された。

 

ロボットの時代 The Rest of the Robots(1964)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010572-3 1984年発行

収録作品:AL76号失踪す/思わざる勝利/第一条/みんな集まれ/お気に召すことうけあい/危険/レニイ/校正

 「われはロボット」と比べると、本書はロボットパラドックス以外の、人間ドラマに重点を置いた作品が目立つ。特にロボットを排除しようと画策する学者の話「校正」(1957)はロボット物のなかでも一押し。

 

アシモフのミステリ世界 Asimov's Mysteries(1968)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010792-0 1988年発行

収録作品:歌う鐘/もの言う石/その名はバイルシュタイン/やがて明ける夜/金の卵を産むがちょう/死の塵/ヒルダ抜きでマーズポートに/真空漂流/記念日/死亡記事/スター・ライト/鍵/反重力ビリヤード

 ミステリに憧れながらも「自分の考え付くプロットは全てクリスティーが使っている」となかなか踏み切れなかったアシモフだが、長編「鋼鉄都市」で念願のSFとミステリの融合を果たす。この本の好意的な批評に喜んだ彼は、続いて短篇に挑戦する。SF界の安楽椅子探偵ウェンデル・アースを主人公にした一連の作品と、ミステリー風SF短編小説を収録したSFミステリ短編集。

 

夜来たる Nightfall  one(1969)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010692-4 1986年発行

収録作品:夜来たる/緑の斑点/ホステス/人間培養中/C-シュート

 SF作家としての地位を確立した作品「夜来る」(1941)をはじめ、成功作と評されながらも長いこと短編集未収録だった作品を集めたNightfall and other storiesより初期の5編を収録。

 

サリーはわが恋人 Nightfall two(1969)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010778-5 1987年発行

収録作品:正義の名のもとに/もし万一…/サリーはわが恋人/蝿/ここにいるのは-/こんなにいい日なんだから/スト破り/つまみAを穴Bにさしこむこと/当世風の魔法使い/四代先までも/この愛と呼ばれるものはなにか/戦争に勝った機械/息子は物理学者/目は見るばかりが能じゃない/人種差別主義者

 Nightfall and other storiesより15編を収録。以前は一部のマニアにしか読まれなかったSF小説だが、第2次大戦、冷戦をへて1960年代には幅広い読者を獲得するに至り、アシモフのもとにも多様な専門誌などから執筆依頼が寄せられるようになる。本書にはSFの転換期に書かれた興味深い短篇が収録されている。

 

カリストの脅威 The Early Asimov Vol.1(1971)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-011136-7 1996年発行/重版未定

収録作品:カリストの脅威/太陽をめぐるリング/一攫千金/時の流れ/恐ろしすぎて使えない武器/焔の修道士/混血児/秘密の感覚

 アシモフの処女短篇「カリストの脅威」(1939)を筆頭に、SFパルプ雑誌全盛期に発表された初期の短篇をまとめた3文冊。各作品の冒頭に自伝的な解説を付記。第一集の本書には1940年までの作品を収録。

 

ガニメデのクリスマス The Early Asimov Vol.2(1971)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-011142-1 1996年発行/重版未定

収録作品:地球種族/金星の混血児たち/虚数量/遺伝/歴史/ガニメデのクリスマス/地下鉄の小男/新入生歓迎大会/スーパー・ニュートロン/決定的!/幽霊裁判/時猫

 SF黄金期を向かえつつあった1940年から41年に発表された作品。同時期にはSF作家としての名声を確立した「夜来る」やロボットものの短篇も発表されている。

 

母なる地球 The Early Asimov Vol.3(1971)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-011155-3 1996年発行/重版未定

収録作品:著者よ!著者よ!/死刑宣告/袋小路/関連なし/再昇華チオチモリンの吸時性/赤の女王のレース/母なる地球

 第2次大戦の勃発、博士号習得、結婚と大きな変化を迎えた生活の中で、アシモフは14ヶ月もの間、執筆から遠ざかる。しかし1943年、「著者よ!著者よ!」を執筆、作家活動に戻り、徴兵されても訓練の合間に執筆を続ける。本書には1943年から49年までの作品を収録。

 

木星買います Buy Jupiter and other stories(1975)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-010596-0 1985年発行

録作品:ダーウィンの玉突き場/狩人の日/シャー・ギード・G/バトン・バトン/猿の指/エヴェレスト/休止/望郷/それぞれが開拓者/空白!/蜜蜂は気にかけない/ばか者ども/木星買います/父の彫像/雨、雨,向こうへ行け/創建者/地獄への流刑/問題の鍵/適切な研究課題/二四三〇年/最大の資産/好敵手/チオチモリン、星へ行く/光の韻律

 〝滑稽な短篇〟を書きたかったが為に生まれた作品「シャー・ギード・G」は珍しい駄洒落落ち。しかしそれ程滑稽とは感じない…本人も満足できなかったらしく、再挑戦した「バトン・バトン」「猿の指」の方がやはり読んでいて楽しいが玉石混在の感もある。ロボット短篇の秀作「光の韻律」など1950年代から70年代までの短篇作品を収録。

 

ゴールド-黄金 Gold(1985)
ハヤカワ文庫SF ISDN4-15-011343-2 2001年発行

収録作品

第一部・最後の物語
キャル/左から右/フラストレーション/幻覚/不安定性/アレクサンダー神王/谷のなか/さよなら、地球/たたかいの歌/フェグフートと法廷/許しがたい過失/おとうと/宇宙の愛国者ー現代の寓話/チッパーの微笑/ゴールド・黄金
第二部・サイエンス・フィクションについて
最長の航海/世界の創造/空飛ぶ円盤とSF/侵略/SFの吹き矢/ロボット年代記/来るべき黄金時代/人類だけの銀河/心理歴史学/SFにおけるシリーズもの/生存者/どこにもない!/アウトサイダー、インサイダー/SFのアンソロジー/SFの影響力/女性とSF/宗教とSF/時間旅行
第三部・SF小説作法
プロットについて/隠喩/アイディア/サスペンス/続きもの/この分野の名称・SF作家になるためのヒント/若者大歓迎/名前/オリジナリティとは/書評/作家の苦労/書きなおし/皮肉/盗作/象徴主義/予言/ベストセラー/偽名/会話

 

聖者の行進 The Bicentennial Man and other stories(1976)
創元推理文庫 ISBN4-488-60407-2 1979年発行

収録作品:男盛り/女の直感/ウォータークラップ/心にかけられたる者/天国の異邦人/マルチバックの生涯とその時代/篩い分け/バイセンテニアル・マン/聖者の行進/前世紀の遺物/三百年祭事件/発想の誕生

 スーザン・カルヴィンのロボット短篇「女の直感」、近年映画化されたロボット中篇「バイセンテニアル・マン」(1976)、映画の原作になるような作品をと依頼されたものの、映画会社の好みに合わせることを善しとしなかった為に没になった「ウォータークラップ」など12編を収録。
「バイセンテニアル・マン」は1977年度のヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞。

 

変化の風 The Winds of Change and other stories(1983)
創元推理文庫 ISBN4-488-60408-0 1986年発行

収録作品:からさわぎ/完全にぴったり/信念/あるフォイの死/公正な交換?/鳥たちのために/見つかった!/美食の哀しみ/ある事情/亡びがたき思想/発火点/接近中/最後の回答/最後のシャトル/記憶の隙間/奪うべからず/歌の一夜/失われた微笑/絶対確実/地球人鑑別法/変化の風

 1970年代後半から80年代前半までに発表された作品を収録。アシモフらしさを堪能できる秀作が多い。

 

SFミステリ傑作選アンソロジー風見潤編
講談社文庫1980年発行/絶版

 アシモフの短篇「ミラー・イメージ」収録。イライジャ・ベイリとR・ダニール・オリヴォーを主人公とした唯一の短篇小説。ソラリアでの事件を解決した後、地球に戻ったベイリのもとにダニールが助力を求めに来る。宇宙船の中で、二人の数学者が名誉を賭けて争っているが、どちらが嘘を吐いているかをはっきりさせねば困ったことになると言う。ベイリは可能な唯一の手段、映話でロボットを尋問することになったが…。
スーザン・カルヴィンのロボット短篇を彷彿させるストーリーです。

 

コンプリート・ロボット
ソニー・マガジンズ2004年発行

ISBN-10: 4789723437  ISBN-13: 978-4789723435

収録作品:親友/サリーはわが恋人/いつの日か/物の見方/考える!/本当の恋人/AL76号失踪す/思わざる勝利/かくて楽園にあり/光の詩/人種差別主義者/ロビィ/みんな集まれ/ミラー・イメージ/三百周年事件/第一条/堂々巡り/われ思う、ゆえに…/野うさぎを追って/うそつき/お気に召すことうけあい/レニイ/校正/迷子のロボット/危険/避難/証拠/厄災のとき/女の直感/世の人はいかなるものなれば…/二百周年を迎えた人間

 「アイ・ロボット」の映画化により刊行された、ソニー・マガジンズ社編纂の短編集。

これまで入手がかなり困難だった「SFミステリ傑作選」にのみ収録されていた「ミラー・イメージ」が再録されているのはありがたい。が、他の作品はみな既刊文庫に収録済みである上、題名には改悪と感じられるものもあり、値段も映画につられて買うには高価すぎる。マニア本を狙ったのだろうが、ちょっとパワー不足か。(すみません、それでも買ったのは私です。)

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